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下線部和訳を鍛える

 構文はとれる、単語の意味も分かる、けれども日本語らしい訳文が作れないという方へ、あるいは訳はできても全体の主張が読み取れないという方へ。今日はネット上の記事ではなく、過去の大学入試問題から1問読んでみましょう。
 全文の意味をとりつつ、下線部はきちんとした日本語に訳してみましょう。


 It is impossible to wear clothes without sending social signals. Every costume tells a story, often a very subtle one, about its wearer. Even those people who insist that they despise attention to clothing, and dress as casually as possible, are making particular comments on their social roles and their attitudes toward the culture in which they live.

 The modern trend in dressing behaviour is usually referred to as one of increased informality, but this is misleading. In reality, there is no loss of formality, merely the exchange of old formalities for new. The wearing of a pair of jeans by a young male today is as much of a formality as was the wearing of a silk hat by his equivalent in a previous epoch. He may feel that he is free to wear anything he likes, and is rid at last of the restricting rules of costume etiquette that once dominated social life, but what he is pleased to wear is as much a uniform today as the costumes of his forefathers were in earlier times. The written rules of yesterday may have been scrapped, but they have rapidly been replaced by the unwritten rules of today.




It is impossible [to wear clothes <without sending social signals>].
服を着ると必ず社会的な信号を送ることになる。

 形式主語構文というのはすぐに見抜けると思います。難しい単語も見あたらないので、「社会的信号を送ること無しに服を着ることは不可能だ」という訳はできると思います。この訳でじゅうぶん問題はないのですが、ここではもう少し上のレベルの話を理解しておきましょう。
 impossibleはnot possibleの意味合いです。また、「〜なしに…することはできない」という訳から、「似たような表現があったなぁ」と連想できないでしょうか?ここで、never〜without…が浮かんでくれば、なかなかの英語力だと思います。
 never〜without Aは、直訳すれば「Aなしには〜しない」ですが、ふつうは意訳して「〜すると必ずA」とします。never〜but…も同意表現ですが、butのうしろはSVなのに対して、withoutは前置詞ですから後ろは名詞(動詞を入れたければ動名詞)になります。
 そのnever〜without Aを参考にすれば、この英文も、「〜すれば必ず…」と意訳できそうだと分かると思います。never〜without Aを丸暗記せず、「直訳→意訳」という覚え方をしていれば、今回の文の和訳にも応用できるのです。丸暗記では受験に太刀打ちできないという理由が、これで分かると思います。



Every costume tells a story, often a very subtle one, (about its wearer).
すべての服は物語を、しばしば非常に微妙な物語を、着ている人について語るのだ。

 costumeは前文のclothesの言い換えです。同じ内容でも、なるべく違う単語に変えていくというのが、欧米の知識人の文章の書き方です。逆に言えば、私たちは英文を読むときに「この単語は直前に出てきたこの語の言い換えではないだろうか」と常に意識しながら読む必要があります。
 そういう目でもう一度この文を読み直すと、tells a storyと前文のsending social signalsが似ているなと気付くのではないでしょうか。signalsをstoryに言い換えているのです。要するにこの文、前文の繰り返しに過ぎないんですね。
 subtleは「微妙な」、覚えておきましょう。subtle oneのoneは、代名詞。storyの言い換えです。

 , often a very subtle one, の部分を飛ばして読むと、a story about...と繋がります。このように、コンマとコンマの間を飛ばして通じる場合、そのコンマで挟まれた部分は挿入句になります

挿入句の見抜き方

コンマとコンマに挟まれた部分を飛ばして文構造が成立する場合
 →その挟まれた部分は挿入句




Even those people (who insist [that they despise attention to clothing], and dress as casually as possible), are making particular comments (on their social roles and their attitudes (toward the culture (in which they live))).
服へ関心を払うことを軽蔑していると主張し、できるだけくだけた服装をしている人々でさえも、社会的役割や、自分の住んでいる場所の文化に対する態度について、特定の信号を発しているのだ。

 まずは全体の文構造を確認します。

 whoから、当然名詞の後ろのSVなので(  )がはじまります。insistの後ろ、that SVですから[  ]を始めます。どこまで行くかですが、ちょっと後ろにandがあります。andの後ろがdressという動詞ですので(直後に「できるだけ」という副詞句がありますから名詞の可能性は薄いです)、andは2つの動詞を結んでいるはずです。可能性としては、「insist and dress」か「despise and dress」となります。後者だとすると、dressの部分も[  ]の内に入りますから、「できるだけ略式で服を着ていると主張する」ことになりますが、「俺はくだけた服装だ」と主張するのもおかしな感じです。よってここは、「insist and dress」と考えます。and dressの前にちゃんとコンマも打ってありますし、ここで切るのが良いでしょう。つまり、thatから始まった[  ]はclothingまで、whoから始まった(  )はpossibleまでになります。ここまで大雑把に訳せば、「…と主張し〜に服を着ている人でさえ」です。

 andの接続関係の見抜き方についてまとめておきましょう。

 andやorは等位接続詞といって、必ず同じ種類の物を繋ぎます(butも同種ですが、butの場合は主に文と文を繋ぐので、接続関係を見抜くのが比較的楽です)。ですので、接続関係を見抜く際には、「どんな種類の物を繋いでいるか」をチェックするのが近道です。
 種類を見抜くにはどうしたらいいか。接続詞節なら頭に接続詞がありますし、to不定詞句なら頭にto doがありますし、前置詞句なら頭は前置詞……つまり、語句の頭を見ればいいわけです。A and Bの場合は、AではなくBの方、つまりandの直後を見てやります。そして、種類を確認したら、同じ種類の物を前から探してやるのです。まとめておきましょう。

andやorの接続関係の見抜き方

1.andやorの後ろを見て、繋いでいる物の種類を確認
2.andやorの前から、同じ種類の物を探す

 are making particular commentsがVOに当たります。comment on Aで「Aについての意見」となるので、on以下は(  )でcommentsを修飾。後ろのandはtheir social rolesとtheir attitudesを結んでます。toward以下は「〜への態度」とつながりそうなので、とりあえず(  )しておきましょう。この(  )が何を修飾しているかは結構曲者です。すなわち、attitudesだけにかければいいのか、rolesの方にもつなげるべきなのか、という問題です。
 「the A and B+形容詞句・節」の場合、冠詞theが1つしかないので、AとBはセットです。こうなると、形容詞のかたまりはAとBの両方に掛けなければなりませんから、「〜なAとB」という訳になります。一方、「the A and the B+形容詞句・節」の場合は、それぞれにtheが付いているので、AとBは独立しています。ゆえに「Aと〜なB」という訳になります。まとめておきましょう。

冠詞から見抜く、修飾関係

the A and B +形容詞句・形容詞節 → 「〜なAとB」
the A and the B +形容詞句・形容詞節 → 「Aと〜なB」

 今回は、theではなく所有格theirですが、理屈は同じです。toward以下はattitudesのみに掛けてやることになります。
 in which以下は(  )。「前置詞+which/whom」は「前置詞+関係詞」を疑って下さい。
 全体を大雑把に訳すと、「…と主張し〜に服を着ている人でさえ、their social rolesや〜に対するtheir attitudesについてコメントをしている」という感じになります。
 国公立大の問題に出るような下線部和訳は、このように文全体の構造を捉えて、大雑把な訳を確認してから訳を始めた方がよいでしょう。全体像がつかめていれば、多少単語が分からなくても、大きく意味が外れたけったいな和訳にはならないものです。

 では中身を見ていきましょう。

 Even those people「人々でさえ」。thoseは「先行詞明示のthat」というやつです。「先行詞はこれですよ」と示しているだけの役割です。「that 名詞+関係詞節」という形の時、thatに特別な意味があるとは思われない場合は、無視して構わないということです。
 insist that they despise attention to clothing「服への関心を軽蔑すると主張する」。insistは「主張する」、despiseは「軽蔑する、嫌う」。「見下す」look down onは類義語です。despiseは「ひどく嫌う」というニュアンスなので、いわゆる「軽蔑」という日本語にはlook down onの方が合っているように思います。clothingはclothesのちょいと固めの表現ですが、ここでは単に言い換えです。
 「服への関心を嫌う」と訳してもいいですが、「英語の句は節で訳すと、日本語らしくなりやすい」という「名詞構文の原則」を考えれば、「服に関心を持つことを嫌う」とやった方が日本語らしくなります。「名詞ばかり続いて、日本語としては硬い文面だなぁ」と感じたときには、思い出すべき原則です。

 and dress as casually as possible「そしてできるだけくだけた服装をする」。as〜as possibleあるいはas〜as S canは「できるだけ〜」。似たような形にas〜as can beというのもありますが、こちらは「可能である限界と同じくらいに〜」ということから、「このうえなく〜」という意味になります。区別しておきましょう。
 casualは「意図していない」というのが元々の意味で、「偶然の、何気ない、略式の」という訳。「できるだけ略式に服を着る」のですから、「くだけた服装をする」と意訳しておきます。

 そんな人々でさえ、are making particular comments「特定の意見を述べている」。単語通りに訳しても意味は通じますが、この文はけっきょく「服装が持つ意味合いを軽視する人でも、けっきょくは何らかの考えを発していることになる」と言いたいわけです。そうなると、このcommentsというのは、実は前文までに出てきたsocial signalsやstoryと同じ意味だということが分かるでしょう。ここでも言い換えが使われているんですね。ですので、和訳の方は、それを踏まえた物にしておいた方が良いでしょう。

 何に対しての信号、意見?on their social roles「社会的役割や」、and their attitudes「態度について」。何への態度?toward the culture「文化について」。どんな?in which they live「彼らが住んでいる場所の」。in whichを元の場所に戻すと「they live in the culture」ですから、それを押さえたような訳を考えましょう。



The modern trend (in dressing behaviour) is usually referred to as one of increased informality, /but this is misleading.
服の着こなしにおける現代の傾向は、形式張っていないことが増えたその一例だとよく言われるが、これは誤解をまねくものである。

 The modern trend「現代の傾向」。in dressing behaviour「服の着方における」。behavior(イギリス式だとbehaviour)は「ふるまい、行動」。
 is referred to asですが、これはrefer to A as Bの構文が受動態になったものですね。まず「他動詞 A as B」は原則的に「AをBとみなす」と覚えておきましょう。regard A as Bやthink of A as Bが有名です。ここでは他動詞部分がrefer to A「Aに言及する」になっています。「AをBだと言及する」とすればいいわけです。
 is usually referred to as「ふつう〜だと言及される」。one of increased informality「増えてきた非公式性の一つ」というのが直訳。increasedとかincreasingが名詞にくっついていた場合は、「増えた〜」とやらずに「〜が増えた」とした方が日本語らしくなります。ここも、「形式ばった物が増えた、その一つ」とやってやります。
 but this is misleading「しかしこれは誤解をまねく物だ」。



<In reality>, there is no loss of formality, merely the exchange of old formalities for new.
現実には、形式が失われたのではなく、古い形式が新しい物と置き換わっただけだ。

 ここは名詞構文の練習にはもってこいの文です。

名詞構文の訳しかた

動詞派生の名詞 + of A
  →(元の動詞が自動詞)……Aが〜すること
   (元の動詞が他動詞)……Aを〜すること

 直訳すると、「形式の喪失は無く、ただ古い形式の新しい物との交換があるだけだ」となります。意味が分からないわけではないですが、日本語としては不自然極まりない物となっています。
 loss of formalityのlossは動詞loseの名詞形ですから、「失う」と動詞で訳してしまいます。すると、loseは他動詞ですからofは「を」と訳さねばならないことになります。「形式を失う」のが、no、つまり「ない」わけですから、「形式を失ったのではない」と訳せます。さらにこれを受動態のように変換すれば、上記のような「形式が失われたのではない」という訳にもなります。能動か受動かの部分はお好みでいいでしょう。
 うしろ、the exchange of old formalities for newも同様に考えますが、ここでヒントになるのは動詞exchangeの語法、exchange A for B「AをBと交換する」でしょう(このforは交換のforというものです。change A for Bやbuy A for Bで見られるforと同じです)。of old formalitiesがAの部分、for newの部分がBの部分なわけですから、「古い形式を新しい形式と交換しただけ」という訳ができあがります。これも、能動態にして「古い形式が新しい形式と交換されただけ」とやっても構いません。

 さて、「新しい形式」って何だろうか、という疑問が生じたところで、次の文へと進んでいきます。



[The wearing of a pair of jeans <by a young male> today] is as much of a formality as was [the wearing of a silk hat <by his equivalent> <in a previous epoch>].
今日若い男性がジーンズを履くことは、先の時代に同世代の者がシルクハットをかぶっていたことと同じくらいに形式的なのだ。

 The wearing of a pair of jeans「ジーンズを履くこと」。これも名詞構文の訳を利用して、ofを「を」と訳します。by a young male「若い男性が」。wearingを動詞として訳しましたので、このby Aの部分を主格として訳しています。today「こんにち」。
 それは、is as much of a formality as「〜と同じくらい形式的だ」。「of+名詞」は形容詞とほぼ同じ意味(of Aは「Aという物を持っている」という意味合い、そこから「その性質を持っている」という意味になり、つまり形容詞のような意味を持つことになります)。なので、as much of A asは「as 形容詞 as」と同様に考えます。

 そのうしろ、いきなりwasから始まっていますが、ここでは倒置が起きています。比較構文のasやthanの後ろは、SVではなくVS語順になることがあります。Sに当たる語句が長かったり、Vが助動詞やbe動詞で文末に置きづらい(文末は普通強く発音するため、弱く発音する助動詞やbe動詞は置きたくない)場合、倒置が起こることがあります。

 また、as以下は文の主語と対比的な物が置かれていることは分かったでしょうか。The wearing of a pair of jeansとthe wearing of a silk hat、by a young maleとby his equivalent、 todayとin a previous epochが対応しています。比較構文というのは、thanやasの前後は同じ文構造が来るはずですから、こうした対比構造が存在するのは当たり前です。当たり前なんですが、これが理解できていると、equivalentという語が分からなくても「young maleと同じ意味かな」と類推できますし、previous epochも「todayに対応しているから昔というような意味かな」と推測できるのです。
 それを踏まえて訳すと、was the wearing of a silk hat by his equivalent in a previous epoch「過去に同年代の若者がシルクハットをかぶっていたのと同じくらい」となります。
 equivalentはequalと同語源で、「同等の物」という意味。「同年代」の意味で使うことが多いですが、そうとは限りませんので「同等の物」と押さえておきます。previousは「以前の、前の」。pre(前)という接頭辞からも類推できるでしょう。epochは「時代」。「画期的な」という意味のepoch-makingという形容詞があります。



He may feel [that he is free to wear anything he likes, and is rid <at last> of the restricting rules of costume etiquette (that once dominated social life)],
若者は、自分は着たい物を自由に着ており、ついにはかつて社会生活を支配していた服の作法に関して制限するための規則から解放されていると感じているかもしれない。

 He may feel「彼は感じているかもしれない」。that以下はfeelの目的語なので[  ]。ちょっと後ろにandがありますが、このandはis free to wearとis rid ofを繋いでいると解釈するといいでしょう。feelとis rid ofを繋いでいる可能性もありますが、「厳しい規則から解放された」というのも、事実というよりは若者の感覚と見た方が自然ですので、that以下social lifeまでを[  ]としておきます。
 that he is free to wear anything「何でも自由に着られる」。be free to doは「自由に〜する」。he likesはanythingという名詞の後ろのSVなので(  )、anything .he likes「着たい物何でも」。andのうしろ、まずat lastを<  >でくくってしまいましょう。そうすると、be rid of A「Aから解放された、Aが無い」という表現が見えてきます。is rid at last of the restricting rules「ついには制限するための規則から解放されている」。restrictはre(後ろに)+strict(引っ張る)で「制限する」という意味。of costume etiquette「服の作法の」。that以下は(  )。that once dominated social life「かつて社会生活を支配していた」。dominateは「支配する」。



but [what he is pleased to wear] is as much a uniform today as the costumes of his forefathers were in earlier times.
しかし、今日の若者が喜んで着ている物は、かつて同年代の者たちの服が制服であったのと同様に、今日の制服なのだ。

 what he is pleased to wearが[  ]。what SVは、関係代名詞whatだろうが間接疑問だろうが、必ず名詞節になります。be pleased to doは「喜んで〜する」。よって「喜んで着ている物」となります。heは、前の文の主語と同じく、今日の若者を指しています。

 うしろは同等比較の構文ですが、比較構文は直訳するとまったく日本語らしくない奇妙な訳になってしまう場合があります。理由は、後半、つまりthanやasの後ろは多くの省略が為されるからです。ゆえに、比較構文では、後半の省略部分を補って和訳を考える必要があります。
 ではどうやって後半の省略を補うのか。そのためには、比較の文がどのように成立するかを理解しておく必要があります。これは英作文でも使える思考法ですから、きっちり押さえておきましょう。

 「私は彼より背が高い」という英文を作りましょう。文の骨は「私は背が高い」ですから、まず「I am tall.」とします。比較対象は「彼の背の高さ」ですが、比較する物は「同じ種類の物」でなければなりません。当たり前です。背の高さを比べるのに、片方は「私の背の高さ」で、比較対象が「彼の体重」では比較になりません。ですから、比較対象の部分は、文の骨と同じ文構造になります。この場合、比較対象は「He is tall.」なのです。
 次、私の方が高いということで比較級を使いますから、「I am taller+he is tall.」となり、また大小関係があるので2つの文をつなぐ接続詞としてthanを使います(同等関係の場合にはthanでなくasを使います)。つまり「I am taller than he is tall.」となります。
 そして、同じ語の繰り返しはなるべく省略していきます。その際、「比較の中心となる形容詞・副詞」は必ず省略します。この場合は後半のtallですね。よって「I am taller than he is.」という文ができあがります。これが文法的には最も正しい文になりますが、同じ語の繰り返しは省略できますので、isも省略して「I am taller than he.」としてもかまいませんし、thanを前置詞のように見立てて「I am taller than him.」としても、現在では間違いとはされません。
 比較構文の作り方は、つまりこういうことになります。

比較構文の作り方

1.2つの同じ構造の文をthan/asでつなぐ。
2.形容詞・副詞を比較級あるいはas原級asに変える。
3.後半部分の「比較中心の形容詞・副詞」を省略する。
4.その他後半から、前半でも使われている語を省略する。

 このようにして比較構文を作文します。ということは、和訳の際にはその逆をやればよいわけですから、前半を参考にして省略部分を補う、比較中心の形容詞・副詞は必ず補う、ということになります。その際、かならず頭に入れておかねばならないのは、thanやasの前後は同じ文構造になるということです。

 今回の英文も同じように考えてみましょう。
 主語をAと置き換えると、A is as much a uniform today as the costumes of his forefathers were in earlier timesとなります。前半と同じ文構造だと考えて省略部を補うと、A is as much a uniform today as the costumes of his forefathers were much a uniform in earlier timesとなります。「かつてforefathersの服が制服だったのと同じくらい、Aは今日の制服だ」というだいたいの意味が見えてきます。
 この大雑把な意味を頭に入れた上で、和訳を作っていきます。ふつうは「英文→和訳→理解」という流れでしょうが、難しい構文の英文は「英文→理解→和訳」と進んだ方がきれいな日本語にできる場合があります。

 更にもう一つ、比較構文を理解するための視点を示しておきましょう。
 比較構文の要素は、「比較する2つの物」「何について比較しているか」「その大小関係」の3つです。つまり「AはBより〜だ」「AはBと同じくらい〜だ」というのが、比較構文の基本的な形式になります。うまく和訳ができない場合は、その要素を読みとって、意訳することで部分点を取りに行く作戦を使いましょう。
 今回の場合は、todayとin earlier timesが対になっていますから、「今日の若者の服」と「むかしの若者の服」は「同じくらい制服っぽい」と解釈できます。英文構造がうまく読みとれなくても、これくらいなら読みとれそうですよね。
 しかも、この視点で英文をとらえると、forefathersという受験レベルを超えた単語も、「若者の意味かなぁ」と推測できます。
 ついでに言えば、1つ前の文がほとんど同じような構造をとっていることもヒントになりますね。「未知の単語の類推法」の3のパターンです。

未知の単語の類推法

1.単語を分解してみる→知っている派生語はないか、知っている語源はないか
2.動詞の語法から類推する
3.同じ構造の文はないか探してみる
4.文脈判断

 主語が同じ「服」でなおかつ「現代」の内容、どちらも同等比較の構文、比較対象は過去、と、「並べて読まない方がおかしい」くらいに同じ構造です。
 ですから、辞書的にはforefatherは「先祖」という意味ですが(fore(前)+father(父))、ここは「先祖」でなく「若者」と訳すべきです。

 さて。
 比較構文の訳をするときの考え方をまとめておきます。

比較構文の訳し方

●後半than/as以下の省略を補う
   ・比較の中心となる形容詞・副詞
   ・前半と同じ文構造になるように省略を補う
●比較の要素から訳を作る
   ・「何と何を比較しているか」「何について比較しているか」「その大小関係」

 さぁ、和訳を完成させましょう。
 今日の若者が喜んで着ている物は、is as much a uniform today「今日の制服なのだ」。as the costumes of his forefathers were in earlier times「かつて若者の服がそうであったのと同じように」。



The written rules of yesterday may have been scrapped, /but they have rapidly been replaced by the unwritten rules of today.
過去の明文化された規則は捨てられたのかもしれない。しかし、今日の明文化されていない規則に急速に取って代わられたのだ。

 The written rules of yesterday「昨日の書かれた規則は」、may have been scrapped「捨てられたかもしれない」。scrapは「捨てる」、may have doneで「〜したかもしれない」。過去に対する推量ですね(助動詞 2を参照のこと)。
 but they「しかしその規則は」、have rapidly been replaced「急速にとってかわられた」、by the unwritten rules of today「今日の書かれていない規則に」。replace A by Bもしくはreplace A with Bで「AをBと取り替える」です。substitute B for A「Aの代わりにBを使う」とほぼ同じ意味です。