では、具体的な文構造の把握法を確認していきましょう。
いくつかの語が集まって1つの意味のかたまりを形成している場合、それをかたまりとしてとらえることが大切です。
例えば、
ex.1−1 Do you know when she will be able to see me ?
という文をそのまま読むより、
ex.1−2 Do you know [when she will be able to see me] ?
と視覚的に構造把握するためにカッコを付けた方が、文の構成を理解しやすくなります。
これくらいならカッコ無しでもいける人がいるでしょうが、こんな文だとどうでしょう。
ex.2−1
In past ages, grandparents and uncles and aunts lived with the family,
and provided different kinds of support; in our present "nuclear"
family, too many roles are demanded of the two parents, which they cannot
possibly fulfill.
センター試験で出てきた文です。かなりの実力がある人はカッコを付けずにスラスラ読めますが、やはりカッコを付けた方が分かりやすくなります。
ex.2−2
<In past ages>, [grandparents and uncles and aunts] lived <with the family>, and provided [different kinds of support]; <in our present "nuclear" family>, [too many roles] are demanded of the two parents, <which they cannot possibly fulfill>.
なお、私は、名詞のかたまりは[ ]、形容詞のかたまりは( )、副詞のかたまりは< >を使います。
SVを含む語のかたまりを節、SVを含まない語のかたまりを句と言いますが、節も句も、それぞれ名詞の役割を果たす物、形容詞の役割を果たす物、副詞の役割を果たす物の3種類があります。つまり、名詞句・形容詞句・副詞句、名詞節・形容詞節・副詞節が存在するということです。
その3種類の見分け方ですが、80%は、簡単に見分けられます。
残り20%は考え得る可能性を消去したり、実際に訳してみて文脈判断するしかない場合です。しかし、80%はほとんど頭を使わずに攻略できますし、残り20%のうちのほとんども、文法がある程度理解できていれば訳す以前に解釈できるものです。
まず、先に公式をやってしまいましょう。
文構造把握の基本パターン 動詞+that SV → 動詞+[that SV]
動詞+SV → 動詞+[SV]
動詞+wh- SV → 動詞+[wh- SV]
名詞+that SV → 名詞+(that SV)
名詞+SV → 名詞+(SV)
名詞+wh- SV → 名詞+(wh- SV)
接続詞SV, → <接続詞 SV,>
文頭の前置詞+名詞 → <前置詞+名詞> |
動詞の後ろに来るのは通常目的語ですが、目的語は名詞です。よって、動詞の後ろにかたまりが来たら、基本は名詞のかたまりになると思ってください。動詞の後ろのthatは接続詞「〜すること」と訳すthatです。「こと」と訳すので当然、名詞のかたまり。動詞の後にいきなりSVというのは、100%thatが省略されている形なので、これも名詞のかたまり。動詞のあとのwh-(疑問詞)SVは必ず間接疑問です。間接疑問も名詞のかたまりです。
名詞の後ろにSV構造が来た場合は、それらは普通、関係詞節になります(名詞+同格のthat SVのみthat SVは名詞節。接続詞 2の「6.同格のthat」を参照)。名詞を修飾する物なので、当然形容詞のかたまりとなります。
接続詞(ただしand、but、orなどの等位接続詞は除く)+SVは、必ず副詞のかたまりになります。また、前置詞+名詞は、形容詞か副詞の可能性がありますが、文頭に来た場合は修飾する名詞がないので、100%副詞のかたまりになります。
以上のパターンを押さえれば、それだけでかなり文構造は把握できると思います。これプラス、文型と重要動詞の語法が押さえられていれば、センターレベルはほとんど躓かなくなるでしょう。
念のため、もうちょっとこまごました話もしておきます。
上で紹介した物以外にも、名詞や形容詞や副詞の役割をする物があります。
名詞になる物は、ふつうの名詞(辞書に名詞と載っている物)はもちろんのこと、それ以外にも、動名詞やto不定詞、that SV、間接疑問(疑問詞+SVやif/whether SV)、what SV(関係代名詞のwhat)があります。
また、文型を押さえてある人は分かっていると思いますが、文の主語や目的語、前置詞の目的語は名詞になります。doingが動名詞(名詞)か現在分詞(形容詞)かを見分けるときに利用する知識なので、一緒に押さえておきます。
形容詞になる物は、ふつうの形容詞以外に、to不定詞、前置詞+名詞、分詞、関係詞節があります。
副詞になる物は、ふつうの副詞以外に、to不定詞、前置詞+名詞、接続詞+SV、分詞構文、非制限用法の関係詞節があります。
まとめましょう。
品詞についての基礎知識
文の主語・文の目的語(動詞の直後)・前置詞の目的語 → 名詞
名詞になる物
名詞、動名詞、to 不定詞、that SV、疑問詞SV、
if/whether SV、what SV(関係代名詞)
形容詞になる物
形容詞、to不定詞、前置詞+名詞、分詞、関係詞SV
副詞になる物
副詞、to不定詞、前置詞+名詞、接続詞+SV、分詞構文、,+関係詞SV |
ここまで述べてきたルールを頭に入れたら、それを実際に使えるようにするため、多くの文章に当たっていきましょう。自分でカッコを付けながら読んでいき、解説を確認しつつ訂正していくのです。はじめは間違っても構いません。失敗を繰り返しながら成長していけばいいのです。
カッコが付けられるようになる、つまり文構造が把握できるようになったら、ようやく文章読解のスタートラインに立ったことになります。一つ一つの文が読めるようになってはじめて、文章全体を理解する土台ができたことになりますからね。文章全体を把握する方法については、別の項で説明することにしましょう。
さて、文構造が把握できたら、当然ながら訳すことになります。
下線部訳ではない場合は、カッコを付けながら、前からどんどん訳していきましょう。ここまでの文章を読んで理解できていると思いますが、ほとんどの場合は、カッコは訳さずに付けられますから、カッコを付けながら前から訳していくというのは可能なはずです。
下線部訳の場合は、カッコを付けてかたまりを意識したら、カッコごと、部分ごとに訳していきましょう。後で、それを日本語で繋がるように繋げていきます。その際に、原則として、カッコの内外で語を入れ替えたりしないことを肝に銘じておいてください。「意味のかたまり」なのですから、文字通り「かたまり」として訳し、他のかたまりと合成しないようにします。
具体的に、ex.2−1で説明してみましょうか。
ex.2−1
In past ages, grandparents and uncles and aunts lived with the family,
and provided different kinds of support; in our present "nuclear"
family, too many roles are demanded of the two parents, which they cannot
possibly fulfill.
In past agesは文頭の前置詞+名詞なので、< >。grandparents and uncles
and auntsがSで、livedは当然V。with以下コンマまでは前置詞+名詞なので<
>。直前が名詞ではないので、( )の可能性はありません。まぁ、迷ったら<
>で処理しておけばいいです。違っていたら後で修正する、くらいの心構えで構いません。
andの後ろは動詞の過去形、ということは、andは2つの動詞の過去形を繋いでいることになります(接続詞 1の「1.等位接続詞」参照)。つまり、livedとprovidedを結んでいます。「祖父母や叔父叔母は、〜と暮らし、…を供給した」となるのですね。providedのOがdifferent
kinds of support。
セミコロンでいったん文が切れます。で、inからコンマまでが、文頭の前置詞+名詞なので<
>、too many rolesはS。are demanded ofの部分の処理ですが、demandはdemand
A of Bで「AをBに要求する」という語法がありますので、本文はその受身、A is
demanded of Bの形と判断できます。コンマ+wh-は非制限用法の関係詞なので、which以下は<
>となります。possiblyは「可能性がある」という意味ですが、cannotと並んでますので、「fulfillする可能性がある、ということはあり得ない」、つまり「可能性は限りなく低い」という意味になります。cannot
possilyで「どうしても〜できない、とても〜する可能性はあり得ない」と覚えても良いです。
カッコを付けた文はこうなります。主語や目的語の[ ]は分かりやすくするために付けた物ですが、うるさく感じる場合は付けなくて構いません。
ex.2−2
<In past ages>, [grandparents and uncles and aunts] lived <with the family>, and provided [different kinds of support]; <in our present "nuclear" family>, [too many roles] are demanded of the two parents, <which they cannot possibly fulfill>.
全体としては、「〜に、Sはwith以下と暮らし、…を供給していた。〜において、Sはof以下を要求しており、それはwhich以下だ」……このように全体構造を大雑把に掴んで訳しておくと、途方もない誤訳を避けることができます。
では、訳していきましょう。まずは前から順に。
過去の時代において、祖父母や叔父叔母は、住んでいた、家族と、そして供給していた、さまざまな種類の支援を。我々の現在の核家族において、非常に多くの役割が、求められている、2人の親に、それは彼らにはどうしても果たせない。
前から順番に訳しただけの汚い和訳ですが、意味をとる分には問題ないですね。下線部訳でなければ、この程度の訳しかたで構いません。実際には、上でやったカッコ付け=文構造把握と、この「前から訳」は同時進行でおこなっていきます。
次に下線部訳など、精読する必要がある場合。さっきの汚い訳を、日本語らしい順番に並び替え、言い回しを適切な物に変えていきます。
例えばこんな具合。
「かつて、祖父母や叔父、叔母は、家族と共に暮らしており、様々な種類の支援を与えていた。しかし現在の核家族では、あまりにも多くの役割が2人の親に求められており、それはとても果たせる物ではない」。
訳しかたのイメージは、つきましたか?
初学者は、必ず文構造を把握しながら訳すように努めましょう。「前から読んで訳していく」「直読直解」などというのは、カッコを付けなくてもカッコがついているように見えるようになってからの話です。基礎を蔑ろにして「速読」を練習しても、いい加減な読解にしかなりませんし、いずれスピードも頭打ちになります。文構造把握をキッチリできるように読んでいけば、そのうち、自然と、カッコがなくても括弧がついているように見えてきます。その時、自然と「速読」ができるようになっているのです。「速読」はやろうと思ってやる物ではありません。
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