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下線部訳の方法論

  基本的な流れは

1.文構造を把握する。
2.大雑把な訳をする。
3.部分部分を訳す。
4.日本語として通じる文に組み直す。


 順に見ていきましょう。この文を例文に使います。

Modern civilization seems to have reached the point where any scientific attempt to control damage inflicted by pollution must prove useless.


1.文構造を把握する。

 名詞のかたまりに[  ]、形容詞のかたまりに(  )、副詞のかたまりに<  >を付けます。同時に、主語と動詞を意識し、動詞がどのような構文・文型をとるのかについても目を光らせます。
 カッコの付け方については、以下を最低限のルールとして頭に入れておきます。

文構造把握の基本パターン
 動詞+that SV → 動詞+[that SV]
 動詞+SV  → 動詞+[SV]
 動詞+wh- SV → 動詞+[wh- SV]
 名詞+that SV → 名詞+(that SV)
 名詞+SV  → 名詞+(SV)
 名詞+wh- SV → 名詞+(wh- SV)
 接続詞SV, → <接続詞 SV,>
 文頭の前置詞+名詞 → <前置詞+名詞>

 また、文構造把握の大前提として、品詞の概念が理解できていなければなりません。以下にまとめておきます。

品詞についての基礎知識

文の主語・文の目的語(動詞の直後)・前置詞の目的語 → 名詞

名詞になる物
  名詞、動名詞、to 不定詞、that SV、疑問詞SV、
  if/whether SV、what SV(関係代名詞) 

形容詞になる物
  形容詞、to不定詞、前置詞+名詞、分詞、関係詞SV
副詞になる物
  副詞、to不定詞、前置詞+名詞、接続詞+SV、分詞構文、,+関係詞SV


 知らない単語の場合はどうやって品詞を見抜くか。文のどの位置にあるかでだいたいの見当は付きます(文頭だったら主語だから名詞だ、など)。また、語尾の形によってもある程度類推できます。しかしながら、単語を覚える際に品詞もいっしょに頭に入れていくのが基本です。

 例文を見ていきましょう。

 Modern civilizationがS、seems to have reachedがVとなります。目的語がthe point。reachは「reach A」の形で「Aに到達する」です。前置詞はとりません。
 the pointのうしろのwhereからは(  )が始まります。whereは関係副詞ですが、それがわからなくても、名詞の後にSVのかたまりがあったらすぐに(  )を付ける癖を付けておきましょう。
 (  )がどこまで続くかですが、まず中身の構造を把握しておきます。any scientific attemptがS。attempt to doで「〜する試み」という表現がありますからとtoから( )を始めます。controlの目的語がdamage、そこにinflictedが付いていますが、これは動詞の過去形ではなく過去分詞です。「damage(損害)」は「inflict(損害を与える)する物」ではなくされる物だからです。よってinflicted以下は過去分詞が後ろから修飾している形。inflicted by pollutionが( )。ここまででcontrolからのかたまりが終わりますから、toからの( )もここまで。ようやく、any scientific attemptに対する述語が現れます。must proveがV、uselessがCです。形容詞は絶対に目的語にはなりませんから、ここは補語です。

[Modern civilization] seems to have reached the point (where [any scientific attempt (to control damage (inflicted by pollution))] must prove useless).


2.大雑把な訳をする。

 把握した文構造をもとに、だいたいの訳を作っておきます。下線部訳でない場合は、ここは飛ばして3に行ってしまえば問題ありません。主節からかっこの中へと進んでいくイメージで訳を作っていくと、巧く行きます。
 例文の場合は、このようになります。

 Modern civilizationは(  )なpointにreachしたように思われる。
 (  )されたdamageをcontrolするようなSがuselessとproveしたにちがいないような。



3.部分部分を訳す。

 Modern civilization「現代文明は」、seems to have reached「到達したように思われる」、the point「点に」、where any scientific attempt「どんな科学的試みも」、to control damage「損害を制御するような試み」、inflicted by pollution「汚染によって与えられた」、must prove useless「役にたたないと分かるに違いない」。


4.日本語として通じる文に組み直す。

 最後に、日本語として通じるように、3のバラバラ訳を並び替えます。
 「現代文明は、汚染によって与えられた損害を制御するようないかなる科学的試みも、役にたたないと分かるに違いないような点に、到達したように思われる」。

 翻訳の場合だともう少しこなれた日本語にする必要があるでしょうが、受験の下線部訳ならこの程度でよいでしょう。


 もう一つ例題をやっておきましょうか。

Although man has been aware of electricity for over 2,000 years, it is only recently that he has begun to understand what it is and how it works.


1.文構造を把握する。
 althoughからコンマまで<  >。
 manがS、has been aware ofがV。be aware of Aで「Aに気付く」。for +時間で<  >。
 it is 〜that…だが、挟まれているrecentlyは副詞なので、強調構文(参照:接続詞 2 の3)。that以下は、heがS、has begun to understandがV、what it isは動詞の後ろのSVのかたまりなので[ ]、andのうしろ、how it worksも[  ]。andは2つの「wh-SV」を結んでいます。

<Although man has been aware of electricity <for over 2,000 years>>, it is only recently that he has begun to understand [what it is] and [how it works].

2.大雑把な訳をする。
 〜だけれどもthat以下なのはごく最近のことだ。
 彼が[  ]と[  ]を理解し始めたのは


3.部分部分を訳す。
 Although man「人類は」、has been aware of electricity「電気に気付いていたけれども」、for over 2,000 years「2000年以上の間」、it is only recently that「〜なのはごく最近のことだ」、he has begun to understand「人類が理解し始めたのは」、what it is「それが何であるか(電気の性質)」、and how it works「それがどのように機能するか(電気の機能する様子)」

 最後の2つの[ ]は、疑問詞節と考えても関係詞節と考えても、どちらでも通じます。

4.日本語として通じる文に組み直す。

 「人類は、2000年以上の間電気の存在に気付いていたけれども、それが何なのか、どのように機能するかを理解し始めたのは、ごく最近のことだ。


 当然ながら、ある程度の単語力、ある程度の文法力がなければ、構文把握もままなりませんし、大雑把な訳すらできないでしょう。文章読解と、単語や文法の勉強は並行しておこなっていきましょう。