仮定法                          前のページへ戻る


 仮定法を苦手とする受験生は多いですが、基本の考え方と公式を暗記すれば、ほとんどの文法問題は簡単に解けるようになります。


 まず仮定法とはなんぞやという話ですが、「現実ではない話」をするときに使うのが仮定法という文法です。例えば、「もし俺が10歳若ければ…」とか「仮に地球が吹っ飛んだら…」とか、現実には起こっていない・起こらないと思っている内容の話をするときに使うものです。

 例えば……

ex.1 If he stands by us, we will succeed in this plan.
ex.2 If he stood by us, we would succeed in this plan.

 どちらも「彼が味方なら、私たちはこの計画を成功させられるだろう」という日本語です。しかし、上は普通の言い方(直説法と言います)、下は仮定法を使った文で、当然意味合いは異なります(敢えてex.1 とex.2 の訳に違いを出すとしたら、仮定法のex.2は「この計画を成功させられるだろう」と、「に」を付けることで微妙なニュアンスを伝えられます。)。

 仮定法は現実ではないと思っている話をする時に使う物なので、下の文では彼が味方になる確率はゼロか限りなく低いのです。逆に上の文だと、彼が味方になるのかどうかは半々の確率です。
(ちなみに、ex.2を過去の普通の仮定と取れないのかという質問を受けることがあります。仮に彼が味方になる確率が半々でしかも過去のことを話すときにはどうするのか、と言う質問です。しかし、過去のことなら、彼が味方だったかそうじゃなかったかは今は分かっているはずですから、「普通の仮定」という状況はあり得ません)

 ついでに。

 「〜ならば・〜だったら」という表現には3パターンあるのは分かるでしょうか。
 まず、「私が二十歳になったら」という場合。二十歳前に病気や事故で…という可能性はなくもないですが、普通は誰しも二十歳になります。つまり「ほぼ間違いなくそうなると予測される条件」について述べている場合です。逆に「私が戦国時代に生まれていたら」というのは「間違いなくそうならない条件」ですね。そして3つ目は、「明日雨が降ったら」のように「そうなる場合もそうならない場合を想定できる条件」です。

 整理するとこうなります。
「Xならば・Xだったら」→1.Xがほぼ間違いなく起こる
               2.Xになる場合もならない場合もあり得る
               3.Xはほぼ間違いなく起こらない

 1の時にはwhen SVを、2の時には普通のif SV、3の時には仮定法を使います。とくに、1のパターンでifを使わずwhenを使う、ということをしっかり理解しておいてください。逆に、when SVを「〜とき」と訳すだけでなく、「〜だったら」と訳した方が日本語として通りがいい場合もある、と知っておくと便利です。


 さて、事実に反したことを述べるのが仮定法だと押さえたうえで、公式を覚えていきましょう。
 基本的には、現実離れした感覚を表すために過去時制を用いることになります。


1.仮定法の公式

 では、基本公式から。

仮定法基本公式

現在の仮定「(今)〜だったら(今)…だろう」(仮定法過去)
 If S 過去形, S would 原形.(If 過去, would )
過去の仮定「(昔)〜だったら(昔)…だったろう」(仮定法過去完了)
 If S had 過去分詞, S would have 過去分詞.(If had PP, would have PP)

※緑色で書いた方は、語呂がいいので暗記に利用して下さい。
※「仮定法過去」とかいうのは、使っている動詞の形から決められた用語で、
 実際の内容とは関係ないので注意して下さい。
if節の中でbe動詞を使う場合は、wereを使うのが本来の用法です。
 しかし、「if I were you」や「as it were(いわば)」を除き、口語においてはwasもよく使われます。
 ちなみにwereを使うのは、かつての「仮定法専用の1・3人称動詞」と「仮定法専用の2人称動詞」が、
 変化した結果たまたま同じwereになったからです。
 また、複数過去のwereと仮定法過去のwereも、本来は別物なのです。似ていたので同じ形に変化しただけです。

 これから覚える様々な構文の基本になりますから、絶対に暗記せねばなりません。


 まれに、混合型が出てくることがあります。
 「今朝、朝食を食べていたら、今頃お腹はすいていないだろうに」という文です。

混合型「(昔)〜だったら(今)…だろう」
 If S had 過去分詞, S would 原形.(If had PP, would)

ex.3 If I had eaten breakfast this morning, I would not be hungry now.

 仮定法の問題で、時を表す語句が文中に見えたときは要注意ですね。

 混合型はこのタイプしかありません。
 「今〜なら昔〜だっただろう」という文はあり得ません。今の条件が過去に影響を与えるなんて状況、SFでもない限りあり得ないですからね。
 しかし、「私があなただったら」というような仮定の場合は例外です。例えばこんな文。

ex.4  If I were you, I would not have said such a nonsense.

 昔は私だったけど今はあなた…なんて人格がコロコロ入れ替わることはないので、過去の話でも「XがYだったら」という場合はただの過去形にするんですね。「逆混合型」はこのパターンくらいしか無いと覚えておきましょう。暗記好きな人は「If I were you」を熟語として覚えてもかまいません。


 では、次、所謂「仮定法未来」と呼ばれる用法。未来・現状において可能性が低いことを述べるときに使います。条件節の部分だけ覚えておけばいいでしょう(細かいことを言うと、were to doの方は主節は助動詞の過去形ですが、shouldの方は主節は助動詞の現在形も使えます)。

いわゆる仮定法未来

話し合いの中などで「仮に〜なら」と条件を示す(架空の話について述べる)
 If S were to do,

「万一〜なら」と将来的に可能性のきわめて低いことを示す
  (「現時点ではあり得ないと思うけど」のニュアンスが入る)
 If S should 原形,


2.仮定法を使った様々な表現

 次は仮定法を使った様々な構文を勉強しましょう。一気に囲みでまとめます。なお、囲み中に「仮定法」とある部分は、1の「仮定法の基本公式」で説明した構文のif節の部分と同じ構文を取ります。

仮定法を使った様々な構文

「(Sは)〜だったらなぁと思う」
  S wish 仮定法(S did/had done).
「Aがなかったら」
  If it were not for A, / If it had not been for A,
「もう〜する時間だ」
  It is (about) time 仮定法.
「まるで〜のように」
  as if/though 仮定法(S did/had done).


 順番に詳しく見ていきましょう。
 S wish 仮定法ですが、時々参考書には「I wish 仮定法」とありますが、これは正確ではありません。「I」以外の主語も取ります。

ex.5  I wish I had money.「お金があったらなぁ」
ex.6  He wished he was young again.「彼はもう一度若返れたらと思っていた」

 この構文は他よりも、wereよりwasを好む傾向があります。また、蛇足かもしれませんが、この構文はただ望んでいるだけじゃないですよ。現実には実現不可の内容を望むときにしか使いません。「明日天気だったらいいな」だったら、普通にwillを使って「I hope it will be fine tomorrow.」となります。wishの後ろがSVの場合は仮定法になるのが一般的ですので、hopeに変えるのが無難。

 気を付けて欲しいのは、「仮定法」の部分です。仮定法の基本公式では「現在なら過去形、過去なら過去完了形」となりますが、この構文ではそういう使い分けはしません。ex.6ではwishは過去なのに、仮定法部分はただの過去形ですよね。
 これですが、主節の動詞、つまりwishと同時制なら過去形、wishよりも前の時制なら過去完了形、というルールがあるからなのです。つまり、客観的な時制でなく日本語のように主節の動詞との関係で時制が決まっているんですね。

 ですから、「車を持っていたら…と彼は今後悔している」という文はこうなります。

ex.7  I wish I had had a car.

 この時制の感覚は非常に重要なので、気を付けて下さい。


 さらに、この構文に関しては主語が「I」の時の同意表現もよく問題に出ます。暗記しましょう(下2つは私大入試に出たことがあります、私個人は覚える必要は無いと思いますが…)。

I wish 仮定法.
=If only 仮定法!
(=How I wish 仮定法!)
(=Would that 仮定法!)




 次はIf it were not for Aですね。これは暗記です。
 これさえ暗記すれば、もう一つのIf it had not been for A,は暗記しなくてもいいです。
 勘のいい方はおわかりと思いますが、前者は現在の話、後者は過去の話。つまり、現在の仮定は「If 過去」、過去の仮定は「If had PP」という基本公式と合致してますから、後者は暗記しなくていいということです。

 なお、書き換え表現も合わせて覚えておきましょう。

If it were not for A, / If it had not been for A,
=But for A,
=Without A,

 下2つは現在でも過去でも使えます。

 例文を一応挙げておきます。
ex.8  If it were not for your quick play, our team would not win.
     「君の素速いプレーがなければ、私たちのチームは勝たないだろう」
ex.9  If it had not been for you, our project would not have succeeded.
     「あなたがいなかったら、我々の計画は成功しなかっただろう」


 次はIt is (about) time 仮定法.
 timeの前にaboutが付くこともある(そうなると話者の苛立ちが強まったニュアンスが出ます)、ということだけ注意して暗記してしまいましょう。(It is high time SV という表現もありますがあまり使われません)

ex.10  It is time you went to bed.
      「もう寝る時間だよ」

 この構文も「S wish 仮定法」と同様に、主節の動詞との関係で時制が決まるのですが、時間のズレが起こる可能性はほとんどないので、単純に「It is time S 過去形」と覚えてもいいでしょう。



 最後にas if/though 仮定法

 これも、「S wish 仮定法」と同じく、主節の動詞との関係で時制が決まることに注意しましょう。
 
ex.11 You talk as if you knew everything.
      「君はまるで何でも知っているかのように話すね」
ex.12  She looked as if she had seen a ghost.
      「彼女はまるで幽霊でも見たかのような顔をしていた」

 ex.11では、話しているのと全て知っている(みたい)のは同時ですから、過去形。
 ex.12では、幽霊を見た(みたい)のとそういう様子に見えるのにはタイムラグがあるので、過去完了形。幽霊を見て、その後に驚いたような表情をするわけですからね。

 as if の節は、副詞節になったり、ex.12のように補語として形容詞節になることもあります。

 また、as ifの後ろは、「まるで〜のように」という比喩が現実味の薄い物なら仮定法を使いますが、現実的な場合、たとえば「本当に賢い人が、"まるで自分が天才であるかのように振る舞った"」というような場合は、現実に反しているわけではないから仮定法を使う理由もなく、すなわち「as if 直説法」の形になります。

 また、as if to do「まるで〜するように」という句の形で使われることもあるので、併せて覚えておきましょう。センター試験では、こちらの形の方がよく出てきます。


 
 さて、仮定法の基本部分についてはここまで。
 仮定法2では、ifの省略やif節の代用について説明します。


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