仮定法2                          前のページへ戻る


 この項では、仮定法について、公式だけでは処理しきれない物についてお話しします。


1.ifの省略

 仮定法の場合に限りますが、if節の「if」を省略するという事態が起こります。で、ただ省略しただけでは「接続詞なしにSVが2組」というルール違反を起こしますので、倒置させることによって特別な構文ということにします。
 例文で具体的に見てみましょう。

ex.1  If I were to take over my father's business, I would make a drastic reform.
ex.2  If World War Uhad ended two years earlier, how many lives would have been saved?
ex.3  If anything should happen to him, call me at once.

 ifが省略されると以下のようになります。

ex.1−2  Were I to take over my father's business, I would make a drastic reform.
ex.2−2  Had World War Uended two years earlier, how many lives would have been saved?
ex.3−2  Should anything happen to him, call me at once.

 ルールとしてまとめると、仮定法のif節ではifが省略されることがあり、その時にはif節部分は疑問文の語順になる(倒置が起こる)、ということになります。なお、訳はifがある場合と同じようにやって構いません。

 暗記が好きな人は、以下の囲みを公式のように覚えるのもいいでしょう。

ifの省略による倒置

If S had done → Had S done
If S were to do → Were S to do
If S should do → Should S do

 コンマで二つのSV構造が見られ、なおかつ前半が倒置していて後半に助動詞の過去形があったら、この項目を思い出しましょう。


2.if節の代用

 次にif節を使わない仮定法に話を進めます。中堅以上の大学を受験するなら、必ず理解しておかねばならない部分です。


 これまで、仮定法といったらif節の方が大切なように述べてきました。「as if 仮定法」や「S wish 仮定法」の「仮定法」も、if節の方の構文のことを指していました。
 しかしこれは、市販の参考書に合わせたり、受験生の理解の便宜上、そのような用語をしたのであって、実は仮定法の最も重要な部分は主節の助動詞部分なのです。重要だからこそ「主」節という言葉があるのですしね。
 実際は、助動詞の過去形が非現実のことであるというのを示しているのです。
 ここで、ちょっと助動詞の過去形について用法をまとめておきましょうか。

助動詞の過去形
1.ただの過去
2.仮定法
3.婉曲

 1については説明不要ですね。willやcanが過去形の場合、この可能性があります。mayの過去形は、ただの過去で使うことは(問題の中で出てきた場合は)あまりありません。

 3については、有名なのは「Would you 〜?」のような会話表現です。「Will you」よりも「Would you」の方が丁寧な表現だというのは聞いたことがあると思います。あとは、「might as well」ですね。これは「may as well(〜した方がよい)」のちょっと丁寧な表現です。暗記表現として出てくる物が多いので、別にここで必死に覚える必要はありません。
 それに実はこれも2の仮定の仲間です。例えば「Would you」なら、「もしあなたにその気があるのでしたら」という仮定の意味が言外に込められているのです。

 で、本命の2です。
 押さえておかねばならないのは、助動詞の過去形が出てきたら仮定法を疑え、ということです。現在時制の話(文脈や副詞で把握しましょう)で過去形助動詞はおかしいですし、過去時制でも助動詞の過去形の後にhave doneが書かれていたら仮定法の可能性大ですね。

 かなり話が長くなりましたが、「助動詞の過去形が出てきたら仮定法を疑え」ということが徹底できてないと、この項のテーマである「if節の代用」はなかなか見抜けないのです。「if」という分かりやすい目印がないため、助動詞の過去形くらいしか「仮定法であること」を見抜くヒントがないのです。


 では、実際にif節の代わりに使われる物をみていきましょう。


(i) 主語に条件

ex.4  A little care would have avoided the accident.
   「ちょっと注意すれば、その事故は避けられたのに」

 主語の「A little care」にifの意味が込められています。「ちょっとの注意だったら」その事故を避けさせられた…ということです。述語部分の「would have done」、つまり助動詞の過去形で仮定法と推測し、他にif節の代わりになりそうな物がないので主語に仮定の意味を込める、という考え方です。


(ii) 副詞に条件

ex.5  I promised to give him the book; otherwise I might have lent it to you.
   「私は彼に本をあげることを約束した。そうでなければ、私はそれをあなたに貸しただろう」

 副詞に条件を込める中でも特に有名なのがこのotherwiseです。otherwiseは元は「other way」で、「他の方法で」「他の点で」「そうでなければ」という意味を持ちます。仮定法とともに使う場合は「そうでなければ」です。
 otherwiseの役割は、直前の文を否定して仮定することです。つまり、ex.5で言えば、otherwiseは「if I had not promised to give him the book」に書き換えることが出来ます。


ex.6  With a little more diligence, you would have succeeded.
   「もうちょっと勤勉さがあれば、君は成功していただろうに」
ex.7  In different circumstances, I'd have said yes.
   「違った状況だったら、私は「はい」と言っただろう」

 これは前置詞に条件の意味が込められている場合です。「もし〜がなかったら」で使われる「Without A」や「But for A」も実はこの仲間です。


ex.8  To hear him talk, you'd think he was Prime Minister.
   「彼が話すのを聞けば、君は彼が首相だと思うだろうね」

 これは不定詞にifの意味が込められている場合。


ex.9  Born in better times, he would have been known all over the world.
   「もっとよい時代に生まれていたら、彼は世界中に知られていただろう」

 これは分詞構文に仮定の意味がある場合。


 覚える構文が多いなと思うかも知れませんが、先に述べたように「助動詞の過去形」に注意を払うことができれば、「ifの意味になるのはどこか」と探すだけなので、考えるほどに難しくはありません。


(iii) 名詞に条件

ex.10  One more step, and you would have fallen off the cliff.
   「あと一歩進んでいたら、崖から落ちていただろう」

 これは、名詞, and S would〜.「…があったら〜だろう」と覚えておきましょう。



(iv) 代用すらない場合
ex.11 I'm so hungry that I could eat a horse.
   「かなりお腹がすいているから馬1頭食べられるよ」

 馬を1頭食べられる人は普通いません。あり得ないことを述べているので仮定法(助動詞の過去形)を使っている…という文です。これはかなり難易度の高い項目なので、「こんなのもあるんだ…」と思うくらいでいいでしょう(難関を受ける人は別ですが)。


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