比較構文について見ていきましょう。
和訳問題や英作文では、比較構文は大きく差のつくポイントとなります。比較で使われる構文は、丸暗記ではなく、なぜそのような構造をとるのか、きっちり理解しておかないと、応用が利きません。
1.比較構文の構造
具体的な公式や構文の前に、比較の文はどのようにして生まれるかを理解しておきましょう。この理解が甘いと、下線部和訳や英作文で点を落とすことになります。
まず、中学レベルの話からしておきます。
英語では、2つのものを比較する場合、いくつかあるうちで最も〜と表現する場合、形容詞や副詞を変化させます。比較のニュアンスを込めて使う場合には比較級という形を、「最も〜」というニュアンスを込めて使う場合には最上級という形を使います。ちなみに、元々の形のことは原級と呼びます。
比較級、最上級については、以下のルールを覚えておきましょう。
比較級・最上級
3音節以上、または2音節でも-ous/-ful/-less/-ing/-lyで終わる語
比較級:more 原級 最上級:most 原級
それ以外の語
比較級:-er 最上級:-est
※音節の数は、母音の数と思えばいいでしょう。母音がくっついている場合は1つと数えます。
例えばcoolは1音節です。
特殊変化
good/well-better-best
bad/ill-worse-worst
many/much-more-most
little-less-least
far-farther-farthest(距離)
-further-furthest(程度。比較級も最上級も「はるかに(な)」と訳せば問題ない) |
具体的に、「私は彼より背が高い」という文を英訳してみましょう。
この文は「彼より」とありますから、「私の背の高さ」と「彼の背の高さ」を比較している文です。2つの要素を繋ぐので接続詞が必要です。2つを比べて大小関係がある場合に使う接続詞はthan、大小関係が(ほとんど)なく同等の場合に使う接続詞はasです。
thanもasも、andやbutの仲間(等位接続詞と呼びます)で、とくに文と文を繋ぐ役割を持っています。この事実を知らない学生は多いと思われますが、比較構文の理解にとっては非常に重要な事実ですのでちゃんと押さえておきましょう。
例文の場合、「私は背が高い」と「彼は背が高い」という2つの文を、thanで結びます。その際、2つを比べて大小関係がありますから、tallは比較級にしておきます。
→(非文)I am taller than he is tall.
そして、ここも大事なのですが、比較構文では、前半と重なっている部分は省略していきます。とくに、「話題の中心になっている形容詞・副詞」は必ず省略します。
例文は、このようになります。
ex.1 I am taller than he (is).
be動詞は省略しても構いません。なお口語では、thanを前置詞のように考えてheをhimにすることも可能です。しかし、まずはthanは接続詞という基本で理解しておく方がよいかと思います。
なお、「私は彼と同じくらいの背の高さだ」という場合は、接続詞をas、形容詞部分は原級の前に副詞のas(「(接続詞の)as以下」を指して「それと同じくらい」という意味合いです)をつければOKです。
ex.2 I am as tall as he (is).
(厳密には「as...as 〜」は「〜に勝るとも劣らない」「〜以上だ」というニュアンスです。だから、not
as...as〜は「〜以上ではない」→「〜ほどではない」となるのですね)
「2つの文を結ぶ」という感覚を持っておくと、複雑な比較構文も問題なく作れます。
例えば、「私は彼よりたくさんの本を持っている」という文。I have books
more than…などと書いてしまう人が多いのですが、「2つの要素を繋ぐ」というのを意識すると、こんな間違いはしなくなります。
この文の場合、「私はたくさんの本を持っている」と「彼はたくさんの本を持っている」というのが基本要素です。だからまず、「I
have many books + he has many books」と考えます。「より」がありましたから、thanを使い、後半から「カブる部分」を削ります。そして最後に、「たくさんの」の部分を比較級にすれば、「I
have more books than he has.」という正解にたどり着けるわけです。
また、「日本の人口は韓国より多い」という文も、「The population of Japan
is large + the population of Korea is large」と考えれば、「The population
of Japan is larger than that of Korea.」と書けるはずです。よくある「The
population of Japan is larger than Korea.」という間違いはしなくなります。
さらに、劣等比較についてもやっておきましょう。
比較級はプラス方向への比較ですが、less 原級という形で、マイナス方向への比較を表すことができます。
ex.3 I am less tall than he is.「私は彼ほど背が高くない」
注意点を補足しつつ、最上級の構文も含めてまとめておきましょう。
基本的な比較構文
比較級 than 〜 「〜より…」
※ 例えば「彼は賢いと言うよりずるがしこい」というような、同一物内での比較はmore 原級than…を使います。
※ 「2つのうちでより〜」と言う場合は、the 比較級 of the twoとなります。
2つだけで比較すれば、大小関係を決定した時点で、最上級と同じ意味合いになるからです。
less 原級 than 〜 「〜より…ない」「〜ほど…ない」
as 原級 as 〜 「〜と同じくらい…」
not as 原級 as 〜 「〜ほど…ない」
※ 細かく言えば、as...as〜は「≧〜」の意味です。
notが付くと「<」の意味になっていることからも理解できると思います。
これを知っていると、いくつかの慣用表現が理解しやすくなります。
the 最上級 of/in A 「Aの中でいちばん…」
※ 「最上級にはtheをつける」と良く言われますが、
後ろに名詞がある、あるいは名詞を補える場合にtheが付く、と考えると正確でしょう。
ですから、He is the fastest runner in this class.ではtheは必須ですが、
He runs fastest in this class.ではtheは無くても構いません。
「This lake is deepest at this point. この湖ではここがいちばん深い」でtheが付いていないのも、
「同一物内での最上級ではtheをつけない」と理解してもいいですが、
後ろに名詞が来ないから、と考えても良いわけです。
※ ofとinの使い分けですが、allや数字が後ろに来ればof、それ以外はinと覚えておくのがいちばん楽でしょう。 |
こまごま話してきましたが、和訳でとくに重要なポイントは、thanやas以下は、前半と重なっている部分が省略されている、という点です。後半で省略されている物が何なのかを見抜かなければ、和訳はできないと言うことです。
例を挙げてみましょう。
ex.4 My father is as fond of paintings as my uncle is of reading.
「読書の叔父?」などと考えてはいけません。前半と重なるところは省略されますから、後半は前半と同じ文構造になると考えるのです。つまり、後半は「my
uncle is fond of reading」の「fond」が消えたと思えばよいのです。すると、「父は絵を描くのが好き」と「叔父は読書が好き」という2つの要素が見えてきますから、訳すのは容易くなります。「叔父が読書好きなのと同じくらいに、父は絵を描くのが好きだ」となります。
ここは文法を学ぶページなのでこれ以上に難しい物には触れませんが、「前半を参考にして省略を補う」ということを理解すれば、どんな文も訳せます。
ここからは、単発で幾つか重要項目を押さえていきます。
2.比較級・最上級の強調
比較級の直前に特定の副詞を置いて、その差分がどれくらいあるかを示すことができます。
ex.5−1 I am taller than he is.
ex.5−2 I am a little taller than he is. 「私は彼より少し背が高い」
ex.5−3 I am much taller than he is. 「私は彼よりはるかに背が高い」
最後のmuchのように、「はるかに」「かなり」と、比較級を強調する副詞はまとめて覚えておきましょう。あとでまとめます。
最上級も、同様に「ずば抜け具合」を補足することができます。
ex.6−1 I am the second tallest in my family. 「私は家族の中で2番目に背が高い」
ex.6−2 I am much the tallest in my family. 「私は家族の中でダントツに背が高い」
theと最上級の間に序数を置いて、「X番目に…」と述べることができます。
また、比較級と同様に、最上級もmuchなどで強調できます。
比較級の強調と併せてまとめます。
比較級・最上級の強調
比較級の強調「はるかに」「かなり」「さらに」
much / far / still / even / yet / a lot / a great deal
最上級の強調「ずば抜けて」
much / by far / far and away +the 最上級
the very 最上級
※ 「more 複数名詞」を強調する場合のみ、many more 複数名詞となるので注意。 |
細かいことを言えば、than以下の比較対象よりも、はるかに差が大きい場合はmuchやfarなどを使います。evenやstill、yetは、差が大きいというわけではなく、「さらに」という上乗せのニュアンスが出ます。たとえばShe
is even more beautiful than her sister.だと、her sisterも美しいということになりますが、それより「さらに」という意味合いが出てきます。
3.最上級の同等表現
最上級のニュアンスを、最上級を使わずに表現してみましょう。
この項目は、公式の丸暗記ではなく、まず日本語での書き換えができるようにしておき、それから英訳できるように練習していきましょう。今回に限らず、英語の構文や慣用表現を押さえる際には、直訳→意訳の流れを頭の中に作るようにしましょう。ど忘れを防いだり暗記しやすくなるだけでなく、試験中に忘れても直訳しながら思い出すことも可能になります。
本題に戻りましょう。
「この川は日本でいちばん長い」という例文で考えましょう。
日本語の書き換えと英訳を並べてみましょう。
「この川は他のどの川より長い」→This river is longer than any other river
in Japan.
「この川より長い川はない」→No other river in Japan is longer than this
river.
「この川ほど長い川はない」→No other river in Japan is as long as this
river.
納得できましたか?
これを公式化してまとめましょう。
最上級の同等表現
A is 最上級.
= A is 比較級 than any other 単数名詞. 「Aは他のどの…より〜」
anything else
※「川」などジャンルが限定されていない場合、
例えば「健康は他の何よりも大事だ」というような場合は、anything
elseを置きます。
= No other 単数名詞 is 比較級 than A. 「Aより〜な…は無い」
Nothing
※「ジャンルが限定されていない場合、主語はnothingになります。
= No other 単数名詞 is as 原級 as A. 「Aほど〜な…は無い」
Nothing
※「ジャンルが限定されていない場合、主語はnothingになります。 |
4.ラテン型比較級
ラテン語由来の比較級に、thanではなくtoを使う特殊な物があります。
ラテン型比較級
superior「優れている」 / inferior「劣っている」 /
junior「年下だ」 / senior「年上だ」 |
ex.7 This wine is superior to that in flavor. 「このワインは風味の点であのワインより素晴らしい」
ラテン語由来の比較級は、語尾がerではなくorなので分かりやすいですね。
余裕があれば、prior/anterior to A 「Aより前に」、posterior to A 「Aより後に」も覚えておきましょう。
比較級ではありませんが、ラテン型の動詞として、prefer A to B「BよりAを好む」も覚えておきましょう。
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