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文脈を論理的に把握する

 少し古い94年度のものですが、獨協大の入試問題を通じて、文脈から問題を解く思考回路を学びましょう。

 Language studies ( 1 ) have emphasized ( 2 ) and written language, ( 3 ) recently have begun to consider communication that ( 4 ) without words. In some types of communication people express more nonverbally than verbally. If you ask an obviously depressed person, "What's wrong ?", and he answers, "Nothing, I'm fine," you probably ( 5 ) him. Even when a person who is feeling ( 6 ) says, "Let's forget this subject, I don't want to talk about it any more !" you know that he hasn't stopped ( 7 ). His ( 8 ) and withdrawal continue to convey emotional meaning.
 One study done in the United States ( 9 ) that in the communication of attitudes, 93 percent of the message was transmitted by the tone of the voice and by facial expressions, whereas only 7 percent of the speaker's attitude was transmitted by words.
 Apparently, we express our emotions and attitudes more nonverbally than verbally.

(注) withdrawal:ひきさがること

問 文章の空所に適当な語をそれぞれ入れよ。

1. systematically  automatically  traditionally  scientifically  
2. verbal   body   foreign   native
3. and   so   because   but
4. takes in   takes place   takes up   takes off
5. won't believe   will believe   won't trust   will trust
6. outgoing   happy   angry   talkative
7. communicating   talking   arguing   complaining
8. words   outburst   gestures   silence
9. showed   studied   proposed   advised




 単語の空所補充問題には「文法・語法から攻める問題」と「文脈から攻める問題」の2パターンがあります。さらに後者は、「前後を見れば分かる程度の文脈」から判断する場合、「文章全体から分かる文脈」から判断する場合に分かれます。後者は要するに「筆者の主張」を見抜くという、「現代文」的な要素が強く出てきます。
 また、どのパターンの問題であろうと、空所にどの品詞が入るのかは、必ずあらかじめ判断しておきます。主語や目的語なら名詞、前置詞の後ろなら名詞、冠詞と名詞の間なら形容詞……という、品詞の基本的な用法を押さえておきましょう。

 さて。

 今回の文章を読もうとしたとき、1文目からいきなり4つもの空所が登場しています。ざっと見たところ熟語や文法のレベルで解けそうには思われませんので、文脈判断が必要なのですが、4つも空所があると文脈を捉えるのも大変です。
 文章全体を通しての筆者の主張を見抜くのも、1文目に空所が多いと大変です。というのは、英文においては段落の1文目にその段落の話題・主張を提示することが多いからです(逆に言えば段落の1文目を追っていけば文章の流れを掴むことが可能である場合が多いのですが、その話はまた別の機会に)。1文目が空所だらけなので、筆者の主張も読み取りづらいのです。2段落目の1文目は、空所は1箇所しかありませんが「ある研究は」と始まっている、つまり具体例を述べている文なので、筆者の主張を直接捉えるには不向きです。
 ということで、見ておくべきは、3段落目の文、つまりラストの文です。筆者の主張が結論としてもう一度繰り返されていれば、そこから文意を掴むことができます。


Apparently, we express our emotions and attitudes more nonverbally than verbally.

 Apparently「明らかに」。apparentlyは「明らかに」あるいは「見たところ」。we express our emotions and attitudes「我々は情緒や態度を表現する」。more nonverbally than verbally「言葉よりむしろ言葉ではない方法で」。more A than Bは「BというよりむしろA」。AやBには形容詞・副詞に限らず、名詞が入ることもあります。verbalは「言語の」。
 「明らかに、我々は、言語よりむしろ非言語の形で、情緒や態度を表現する」。言葉ではなく、言葉以外の形で思っていることを相手に示す、と言っているわけです。


 これを頭に入れた上で、1文目に戻ります。

Language studies ( 1 ) have emphasized ( 2 ) and written language, ( 3 ) recently have begun to consider communication that ( 4 ) without words.

 ラストの文意を頭に入れた上で1文目を見ると、前半のwritten languageと最後のwithout wordsに目が行くはずです。とりわけwithout wordsの方、「言葉無しで」と言ってるのですから、明らかにnonverballyと同意表現です。すると、written language「書かれた言語」は、verbalに対応すると思われます。
 前半にverbal、後半にnonverbalに当たる語があるので、文の真ん中、空欄3には「逆接」を示すbutが入ると決まります。

 さぁ、前半と後半の内容が逆だと分かると、後は芋づる式に答えが決まってきます。
 空所3の直後にrecently「最近」という語がありますから、前半は「むかしの話」ということになります。空所1には副詞が入るようですから、ここに「むかし」という意味の語を入れるのです。選択肢を見ると、traditionally「伝統的に」が該当します。空欄1はtraditionally
 空所2は、written languageとandで結ばれている、つまりverbalと近い意味の語が入るだろうと予測できます。選択肢を見ると、そのものズバリverbalがありましたね。空欄2はverbalです

 空所4は、訳して通じるようにという解き方でもできますが、やはりここも論理的につめていきましょう。
 takeは自動詞として使う用法はほとんどありません。take off「離陸する」くらいでしょうか。今回、空欄4の後ろはwithout wordsという副詞句しかありませんから、選択肢から「目的語が含まれているもの」を選べばよいのです。take以外に名詞が書かれているのはtake placeしかありませんから、これが答えになります。
 文法的につめて解答すると、こうして「訳さなくても解ける」という場合が出てきます。しかも、訳して解いた場合よりも確実な根拠を元にしているので、自信を持って解答できます。空所4はtake place
 ちなみにtake place「起こる、発生する」です。takes inは「取り入れる、騙す」。「騙す」の意味では、普通受動態で使われます。takes upは「取り上げる、再開する」takes offは「脱ぐ、離陸する」
 
 空所を埋めた形で訳しておきましょうか。

 Language studies「言語研究は」、traditionally have emphasized「伝統的に強調してきた」、verbal and written language「言葉による、書かれた言語を」。but「しかし」、recently have begun to consider「最近考慮し始めるようになった」、communication that take place without words「言葉無しに発生するコミュニケーションについて」。
 
 communicationは「意思の伝達」、languageは厳密には言語に限らず手話やジェスチャーも含めた「意思表示」(だからbody languageという言い方があるのですね)、wordやverbalが「言語による意思表示」となり、最も狭い範囲のcommunicationしか表せないのですね。


If you ask an obviously depressed person, "What's wrong ?", and he answers, "Nothing, I'm fine,"
 ここまで<  >のかたまりです。「もしあなたが、明らかに落ち込んでいる人に"どうしたの?"と聞いて、その人が"何でもないよ、元気だよ"と答えたら」。obviousは「明らかな」、depressは「落胆させる」、名詞形はdepression。
 そうしたらyou probably ( 5 ) him「あなたはたぶん彼を〜だろう」。
 「明らかに落ち込んでいる人」が「元気だよ」と言っても信じるわけありませんから、とりあえず否定表現が入るのは良いでしょう。問題は、believeとtrustの違いですね。
 believe Aは「Aの言うことを信じる」になります。believe in Aという形もありますが、こちらは「Aの存在を信じる」または「Aの価値を信じる」です。「幽霊を信じるよ」と言いたい場合はbelieve in ghostsですね。believe Aの方を使うと、お前はイタコかという話になります。一方trust Aは「Aの人間性を信じる」という意味合いです。

 さて、この場面では「何でもないよ」という言葉を疑うわけですから、答えはwon't believeです。won't trustだと、「せっかくどうしたのって聞いてるのにウソつきやがって、もう信用できねぇ」という反応をしたことになります。

 次の文。

Even <when a person (who is feeling ( 6 )) says, "Let's forget this subject, I don't want to talk about it any more !"> you know that he hasn't stopped ( 7 ).

 Even when「〜な時でさえ」、a person「ある人が」。そのうしろ、who is〜の部分は、名詞の後ろのSVですから、空欄6まで関係詞の(  )です。a person who is feeling ( 6 ) 「6と感じている人が」、says「言うときでさえ」。何と言うか。Let's forget this subject「この話題は忘れよう」、I don't want to talk about it any more !「これ以上それについては話したくない!」。そんな時でさえ、you know that「〜だと分かる」、he hasn't stopped ( 7 )「7をやめたのではないと」。
 全体をざっくり訳すと「6と感じている人が"もう話したくない"と言ったときでさえ、その人が7をやめたのではないことは分かる」となります。

 念のためうしろの文も訳しておきます。

His ( 8 ) and withdrawal continue to convey emotional meaning.

 His ( 8 ) and withdrawal「彼が8したり引き下がったりするのは」、continue to convey emotional meaning「情緒的な意味合いを伝え続ける」。withdrawalは、「もう話したくない」と会話をやめちゃったことですね。8は、withdrawalとセットですから、「会話をやめたこと」と類似の内容が入りますので、答はsilenceです。outburstは、burst outの名詞かなと推測できると思います。burst out douing「突然〜しだす」という表現があります。もともとはburst outは「外に向かって破裂する」ということです。

 さきほど、「言葉と意思がズレているけど、態度には意思が出ている事例」が出ていましたから、今回もそうであるはずです。たしかに、「引き下がったことが情緒的な意味合いを伝えるのだ」と述べています。すると、まず7は、「会話はやめても意思伝達自体はやめてない」という内容になるはずですから、7にはcommunicatingが入ります。筆者の主張は「verbal<nonverbal」ですから、ここでは「会話=verbal」、「意思伝達=nonverbal」となります。ゆえに、talking(会話する)やarguing(議論する)、complaining(不満を言う)のような言語を使った、つまりverbalな行動は当てはまりません。
6の方は、直後の発話内容を考えれば、すぐにangryと分かります。はい、空所6はangry。「怒りを感じている人がもう話したくないと言っていても、コミュニケーション自体を放棄したわけではない」という解釈になります。
 talkativeは「おしゃべりな」。

 覚えておくべき表現を押さえておきます。
 subjectはさまざまな意味がありますが、基本的な意味は「支配」です。subが「下に」、jectが「投げる」で、「下に投げつける」イメージです。ゆえに、形容詞の場合、主にbe subject to Aで「Aに支配されている」という意味合いから、「Aの影響を受けやすい」「Aを受けねばならない」「Aに支配されている」。名詞だと、話を支配する物ということから「主題、テーマ」、文を支配する物ということで「主語」、実験で支配されている者ということから「被験者」……といった意味が出てきます。ともかく、覚えるきっかけを作るためにも、そして意味をど忘れしたときのためにも、「支配」のイメージを押さえておきましょう。
 not〜any moreは〜no moreやno longerとほぼ同じ意味で、「もう〜ない」と訳します。


One study done in the United States ( 9 ) that in the communication of attitudes, 93 percent of the message was transmitted by the tone of the voice and by facial expressions, whereas only 7 percent of the speaker's attitude was transmitted by words.

 One study done in the United States「アメリカで為されたある研究は」、 ( 9 ) that「〜と9する」。that in the communication of attitudes,「態度の伝達において」、93 percent of the message「メッセージの93%が」、was transmitted「伝えられた」、by the tone of the voice「声の調子や」、and by facial expressions「顔の表情で」、whereas「一方」、only 7 percent of the speaker's attitude「話者の態度のわずか7%のみが」、was transmitted by words「言語で伝えられる」。
 that以下は研究によって明らかにされた事実ですから、9に入るのはshowedですね。

 単語を確認しておきます。attitudes「態度」。transmit「伝える」。transが「移動」、mitが「送る」です。tone「調子」、「声のトーン」と言いますよね。facialはfaceの形容詞。expressionは「表現、表情」、expressの名詞形。whereasは接続詞で「一方」。


 逐語訳して何となく解く、というのも不可能ではありませんが、理屈を伴った解き方を習得していないと、「常に解ける」という状態にはなりません。確実な学力を身につけるためにも、文脈を論理的に捉えるということを、常に意識するようにしましょう。