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高2レベルの文章(「太陽系の最後」)

 少し昔の、高校1〜2年生向けの問題集にあった短文です。下線部はきっちりとした和訳を作ってみましょう。

 The Sun is at the center of all things in our solar system. Its light and heat give life to everything on Earth. Without the Sun there would always be night on our planet and we should all die from the cold. Although it is so important to us, the Sun is just another star, like thousands of millions of other stars. If the Sun and the whole solar system it supports were to vanish, the effect on the universe would be no more than if a small star had ceased to shine. Like any other star, the Sun will not remain bright for ever. Gradually, it is cooling down, and in billions and billions of years it will die out altogether.




The Sun is <at the center of all things in our solar system>.
太陽は我が太陽系の全ての物の中心にある。

 The Sun is「太陽は」、at the center「中心にある」、of all things「すべての物の」、in our solar system「太陽系の」。
 solar systemは「太陽系」です。solarはsunの形容詞と考えて構いません。systemは、あるまとまりを表します。日本語だと、「系」「系統」「構成」といった訳が充てられます。



Its light and heat give life to everything on Earth.
その光と熱は地上の全ての物に命を与える。

 itsは「the Sun」を指しています。the Sun's light and heatということです。
「太陽の光と熱が」、give life to everything「全ての物に命を与える」。give A to B = give B A「BにAを与える」です。everything on earthで「地上の全て」。



<Without the Sun> there would always be night on our planet and we should all die from the cold.
太陽がなかったら、私たちの惑星は常に夜となり、我々は寒さで全て死んでしまうだろう。

 ここは、there wouldのwouldに注目です。文章全体が現在形で書かれているのに、ここだけ助動詞の過去形になっています。助動詞の過去形が使われるのは、原則的に時制の一致による過去、婉曲、仮定法の3つのいずれかになります(「原則的に」と言ったのは、過去の習慣を表すwouldのような場合もあるからです)。

 今回if節はありませんが、文頭にwithout the Sunという前置詞句があります。「太陽がない」というのは現実には当分あり得ない話なので、仮定の話だと判断できます。つまり、wouldは仮定法なので過去形なのです。
 助動詞の過去形が出てきたら、仮定法を疑いましょう。if節があれば分かりやすいですが、無い場合は、副詞(副詞句・副詞節)がif節の代わりになり得ないか調べます。if節の代わりになる副詞がない場合は、主語に仮定の意味を当てはめてみます。(仮定法 2を参照のこと)

 日本語では、仮定法に相当する表現がありません。「この川で泳ぐのは危険だ」も「台風の日に泳ぐのは危険だ」も、日本語では「危険だ」の部分に変化はありません。しかし、後者は通常そんなことをする人はいません。英語では、あり得ない話なので仮定法となり、It would be dangerous to swim〜とすることになります。
 下線部訳では、仮定法の存在を常に意識しましょう。「助動詞の過去形」が、気付くためのトリガーになります。また、英作文でも、常に「仮定なのか現実なのか」を意識する必要があります。

 Without the Sun「太陽がなかったら」。この部分がif節の代用です。
 there would always be night「常に夜があるだろう→常に夜だろう」、on our planet「我々の惑星では」。
 and we should all die「我々は全て死ぬだろう」。このshouldは、shallの過去形と見るべきでしょう。shallは話者の意思を含む未来になります。無理矢理訳せば「〜だろう、私の意思によって」という感じです。ですから、1人称主語の場合、「私の意思によって私は〜だろう」となりますから、単にwillと同じと解釈してかまいません。
 die from the cold「寒さで死ぬだろう」。die from Aはdie of Aとも言います。かつては区別が問題になっていた時代もありましたが、今では問われません。



<Although it is so important to us>, the Sun is just another star, <like thousands of millions of other stars>.
太陽は私たちにとって非常に重要だが、何十億もの他の星と同じように、ありふれた星のひとつである。

 althoughからコンマまで< >。Although it is so important to us「それは私たちにとってとても重要だけれども」。itはthe Sunを指しています。
 the Sun is just another star「太陽は単なるありふれた星だ」。anotherはいくつかある内の一つを指しますから、just another Aは直訳すると「ただの、いくつもあるうちの一つのA」となります。つまりjust another Aは「ありふれたA」です。
 like thousands of millions of other stars「何十億もの他の星のように」。thousands of Aは「何千ものA」millions of Aは「何百万ものA」。thousands of millions ofだと、「何百万ものA」がさらに「何千」もあるのですから、かけ算して「何十億ものA」となります。



<If the Sun and the whole solar system (it supports) were to vanish>, the effect on the universe would be no more than <if a small star had ceased to shine>.
仮に太陽や太陽が支える太陽系が消滅してしまっても、宇宙への影響は小さな星が輝くのをやめた場合と同じに過ぎないだろう。

 if以下、コンマまでとりあえず< >とします。
 the Sun and the whole solar systemがif節内の主語。it supportsは名詞の後のSVなので、( )になります。were to vanishがif節内の述語。If S were to doなので「仮に〜なら」という仮定法の表現と気付かねばなりません。
 まずここまで訳しておきます。
 If the Sun and「太陽と」、the whole solar system it supports「それ(太陽)が支える太陽系が」、were to vanish「仮に消えてしまったら」。

 主節が、今回の文章での最難関です。まず構造を把握しましょう。
 the effect on the universeが主語、would be no more がVC、thanでいったん区切りがついて、その後if a small star had ceased to shineは< >。
 この文の難しさは、ひとえに「比較構文」とno more thanという慣用表現が絡み合っている点にあります。

 比較構文は、後半で省略が多用されるため、文意がとりにくくなります。逆に言えば、省略がきちんと補えればクリアできるということになります。
 比較構文の省略を補う方法を理解する前に、まず、比較構文はどのようにして作られるのかを押さえておきます。

 「私は彼より背が高い」という英文を作るとします。文の骨は「私は背が高い」ですから、まず「I am tall.」とします。比較対象は「彼の背の高さ」ですが、比較する物は当然「同じ種類の物」になります。片方が「背の高さ」なら、もう片方も「背の高さ」です。天秤の両側は同じ種類の物を乗せねばなりません。ですから、比較対象の方も、文の骨と同じ文構造になります。この場合、比較対象は「He is tall.」なのです(I am taller than he is tallなんて言わないぞ、という方、結論を急がずにもう少し先へ進んでください)。
 そして、私の方が高いということで比較級を使いますから、「I am taller+he is tall.」となり、2つの文をつなぐ接続詞としてthanを使います(同等関係の場合にはthanでなくasを使います)。つまり「I am taller than he is tall.」となりますね。
 そして、同じ語の繰り返しはなるべく省略していきます。その際、「比較の中心となる形容詞・副詞」は必ず省略します。この場合は後半のtallですね。よって「I am taller than he is.」という文ができあがります。これが文法的には最も正しい文になりますが、同じ語の繰り返しは省略できますので、isも省略して「I am taller than he.」としてもかまいませんし、thanを前置詞のように見立てて「I am taller than him.」としても、間違いにはなりません。

 比較構文の作り方は、つまりこういうことになります。

比較構文の作り方

1.2つの同じ構造の文をthan/asでつなぐ。
2.形容詞・副詞を比較級あるいはas原級asに変える。
3.後半部分の「比較中心の形容詞・副詞」を省略する。
4.その他後半から、前半でも使われている語を省略する。

 このようにして比較構文を作文します。
 「和訳」は「英文作成」の逆ですから、和訳の際には反対に、前半を参考にして省略部分を補う、比較中心の形容詞・副詞は必ず補う、ということになります。その際、かならず頭に入れておかねばならないのは、thanやasの前後は同じ文構造になるということです。

比較構文の訳し方

●後半than/as以下の省略を補う
   ・比較の中心となる形容詞・副詞を補う
   ・前半と同じ文構造になるように省略を補う

 今回の場合、than以下はif節しかありません。thanは等位接続詞、すなわち前半と後半では同じ文構造になりますから、if節のみで主節がないということはあり得ません。省略は「直前と同じ構造だから省略」するものなので、省略されている主節は、文の前半の主節と同じはずです。

 つまり、省略部を敢えて補えば「the effect on the universe would be no more than the effect on the universe would be if a small star had ceased to shine」となります。「太陽や太陽系が無くなった場合の影響」と「小さな星が消えた場合の影響」をくらべているわけです。
 
 さらに、no more thanについて見ていきます。no more than「〜しか」と丸暗記していては、この文には太刀打ちできないでしょう。noはmoreを修飾し、「more具合がno、ゼロ」ということを示しています。つまり「イコール」を表しているのです。noはマイナス、moreはプラスですから、あわせてマイナスになります。「イコール」でなおかつ「マイナス」のニュアンスなので、「〜しか」という訳が出てくるわけです(比較 3を参照)。
 今回は、星が消えた場合の宇宙への影響について述べています。「イコール」でなおかつ「マイナス」ですから、「同じくらいに影響は小さい」という意味だと解釈できます。

 ここまでくれば、訳せるでしょう。
 the effect on the universe would be no more than「宇宙への影響は〜の場合と同じに過ぎない」。if a small star had ceased to shine「小さな星が輝くのをやめた場合と」。cease to doは「〜するのをやめる」

 下線部訳の問題で、もっとも差が付くのは比較が絡んだ文です。後半の省略部分を補い、「何と何を比較しているか」をきっちり見抜いて和訳するよう練習していきましょう。もっと難度の高い比較構文を「下線部和訳を鍛える」で扱っていますので、そちらも挑戦してみてください。



<Like any other star>, the Sun will not remain bright for ever.
ほかの全ての星と同じように、太陽も永遠に明るいままではない。

 Like any other starは< >。「ほかのどの星とも同様に」。「ほかのどの〜」という場合は、any otherの後は単数となります(最近はそれも崩れてきているようですが)。
 the Sun will not remain bright for ever「太陽は永遠に明るいままでないだろう」。remain Cは「Cのままだ」。for everはforeverと同じです。



Gradually, it is cooling down, and <in billions and billions of years> it will die out altogether.
しだいに、太陽は冷えていき、何十億年も経てばすっかり死に絶えるだろう。

 Gradually「しだいに」。grade「段階」の形容詞がgradual、副詞がgraduallyです。
 it is cooling down「それは冷えていく」。and「そして」、in+名詞で< >。in+時間で「〜経ったら」です。in billions and billions of years「何十億年も経ったら」。billions of billions of Aだと、かけ算になるので「何百京もの年」となりますが、ここはofではなくandなので、かけ算でなく足し算になります。「何十億ものA」が2つあるということです。ちょうどいい日本語がないので、「何十億もの」でごまかしておきます。
 it will die out altogether「すっかり死に絶えるだろう」。die outは「死に絶える、絶滅する」。altogetherは「まったく、すっかり」という意味の副詞です。