比較3                          前のページへ戻る


 ここでは、比較構文のうち、苦手とする人の多い「no more than」などを説明します。


主観的表現とその周辺

 丸暗記が好きな人は、後の方に出てくる公式を覚えてください。ただ、丸暗記はど忘れしたら一巻の終わり。理屈を押さえておくと、忘れてしまっても自力で思い出すことができますので、説明も理解することをお勧めします。

 さて。まず、例文を一気に4つ挙げましょう。

ex.1 I have no more than 10000 yen.
ex.2 I have no less than 10000 yen.
ex.3 I have not more than 10000 yen.
ex.4 I have not less than 10000 yen.

 「10000 yen」をセットにして覚えると、覚えやすいです。
 では、説明していきましょう。まず、ex.1とex.2、いきます。

ex.1 I have no more than 10000 yen.
ex.2 I have no less than 10000 yen.

 ここでまず理解しておかねばならないのは、noは直後を否定するということです。
 つまり、ex.1のnoはmoreを、ex.2のnoはlessを、それぞれ否定しています。
 1万円より遙かに多ければmuch more、ちょっと多ければa little moreですから、no moreというのは「more」具合が「no=ゼロ」ということで、つまりex.1は1万円ちょうど持っているということになります。no lessも同様に、「less(少ない)」度合いが「no=ゼロ」ですから、1万円ちょうどを持っていることになります。

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       ||
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10000円 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      much more  more   a little more  no more


 ex.1もex.2も、客観的には「1万円ちょうどを持っている」という同じ事実を表現しているのです。

 では、ex.1とex.2の違いは何か。
 それは、気分です。

 ex.1において、noはマイナス、moreはプラスのイメージの語ですよね?二つ並んでいますから、掛け合わせるとマイナスになりますね?(正の数と負の数のかけ算をイメージしましょう)つまり、ex.1は、1万円を持っているんだけど、気分はマイナスということです。1万円を持っていることをマイナスの気分で表現するので、「1万円しか持っていない」という意味になるのです。

 一方、ex.2では、noはマイナス、lessもマイナス、ですから合わせてプラスになります。1万円を持っていて気分はプラスということです。プラスの気分で1万円持っていることを表現すると、「1万円持っている」という言い方になります。

 分かりました?後で、公式にまとめますので、次にex.3とex.4にいきましょう。

ex.3 I have not more than 10000 yen.
ex.4 I have not less than 10000 yen.

 noは直後を否定しましたが、notは後ろ全体を否定します。
 
 ex.3において、notは「more than 10000yen」を否定します。「10000円より多い」ということは「ない」という意味ですね。「>10000円」ではないということです。つまり、1万円以下だということを表しています。ただ、notがマイナスでmoreがプラスなので、全体として気分はマイナスです。1万円以下ということをマイナス気分で表現しているので、「せいぜい(多くても)1万円しか持ってない」という訳になるのです。

 一方ex.4では、notは「less than 10000yen」を否定します。「<10000円」ではないということです。つまり、1万円以上だということを表しています。ただ、notがマイナスでlessがマイナスなので、全体として気分はプラスです。1万円以上ということをプラス気分で表現しているので、「少なくとも1万円持っている」という訳になるのです。


 では、全てをまとめましょう。同等表現も併せて覚えましょう。 

比較を使った主観的表現

no more than〜(=only ) 「〜しか」
no less than〜(=as ...as ) 「〜も」
(後ろに来る数字が何を表すかによって、asの後ろに来る形容詞・副詞は変わります。
たとえば、ex.2を書き換えた場合は、「as much as」を使います。)

not more than〜(=at most) 「せいぜい、多くても」
not less than〜(=at least) 「少なくとも」

※ no more than については、noがゼロではなく直後否定、すなわち「〜より多い」を否定していると考えて、not more thanと同じ意味と捉えるネイティブも多いようです。

 次は、主観的表現の応用です。

ex.5 She is no more beautiful than her sister.
ex.6 She is no less beautiful than her sister.

 「no more」も「no less」もthan以下とイコールを表すんでしたよね?つまり、二つとも、美しさ具合に関しては「She=her siser」ということになります。
 そして、ここでもプラス・マイナスで考えます。ex.5では、noとmoreで、マイナスですので、否定的表現になります。つまり、「彼女は姉同様美しくない」というブス姉妹について描写した文ということになります。場合によっては、否定文ではなく「〜と同様に過ぎない」という消極的な表現と言うだけの場合もありますので、2通り覚えておくと良いでしょう。とにかく、「no more」で「イコール」のニュアンスを押さえておきましょう。
 一方ex.6では、noとlessでプラスになりますから、「彼女は姉同様美しい」と、美人姉妹について描写した文ということになります。

 まとめましょう。

no more ... than〜 「〜同様…ない」「〜同様…に過ぎない」
no less ... than〜 「〜同様…だ」

 年配の人は、「A whale is no more a fish than a horse is.(クジラは馬同様魚ではない)」という「クジラの公式」で覚えているかもしれません。


 ついでに、noがnotになったパターンもやっておきましょう。こちらはごく軽めに。考え方は、主観的表現の時と全く同じです。

ex.7 She is not more beautiful than her sister.
ex.8 She is not less beautiful than her sister.

 ex.7では、「>her sister」を否定しているので、「彼女の美しさはせいぜい姉止まりだ」となります。
 ex.8は、「<her sister」を否定するので、「彼女の美しさは少なくとも姉以上だ」となります。


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