話法                              前のページへ戻る


 この項では、話法について見ていきます。学校では、直接話法と間接話法の書き換え問題はよくやらせるようですし、確かにふた昔前の受験では問われていたようですが、いまでは受験で書き換え自体が問題になることはほとんどありません。ここでは、英作文や文章読解に必要となる点に絞って、話法について確認していきます。


1.話法とは

 「直接話法」と「間接話法」の2種類があります。まず、日本語で確認してみましょう。

直接話法での表現:彼は、「私は明日、君の妹さんと出かけるよ」と言った。
間接話法での表現:彼は、彼は翌日私の妹と出かける、と言った。

 直接話法というのは、人が話した言葉をそのまま描写した表現のことで、引用符を用いて表します。
 一方、間接話法というのは、引用符を使わずに、書き手・話し手の立場で発話内容を第三者的に客観的に書き表した物です。つまり、直接話法が発話内容を直接書き表すのに対し、間接話法では、発話内容はその文を話す・書く人の立場に直して表現することになります。

 ちなみに、上の例文で感じたと思いますが、日本語では間接話法的表現はほとんど使われません。かぎかっこを使おうが使うまいが、直接話法で表現するのが普通です。
 一方、英語ではフォーマルな文章になればなるほど、間接話法の方が好まれます。一言もゆるがせにできないような発言を紹介する場合などを除き、普通は間接話法です。となると、「日本語と英語のズレ」が生じるので、日本人にはなかなか難しい項目ということになります。きちんとした書き方を身につけておきたいものです。

 間接話法で文を書くときのポイントは、書き手の立場で客観的に書く、ということです。代名詞や指示語を、客観的な立場に立った言い方に変えることができれば、さほど話法で悩むことはないでしょう。この辺りは、「2.間接話法への転換」の項できちんと説明します。


2.間接話法への転換

 直接話法は、引用符を使って発話内容をそのまま書けばいいので、あまり問題はありません。

 直接話法を間接話法に書き換える場合、発話内容によってどの文構造を使うかの決まりがありますので、それをきっちり押さえておきましょう。

話法の転換(直接話法→間接話法)

S say, "平叙文".  → S say that SV.
S say to A, "平叙文".  → S tell 人 that SV.

S say, "yes/no疑問文".  → S ask (人) if/whether SV.
S say, "疑問詞疑問文".  → S ask (人) wh- SV.

S say, "命令文".  → S tell A to do.
   ※ ニュアンスによってorder A to do や advise A to do、command A to doを使っても良い。
S say, "Don't 〜".  → S tell A not to do.
S say, "please 命令文".  → S ask A to do.
S say, "Let's 〜".  → S suggest that we (should) do.

 平叙文というのは、疑問文ではない、普通の肯定文や否定文のことです。平叙文が文の一部になる場合は、that SVを使います。対話の相手がはっきりしている場合はtell A that SVを使い、対話の相手がはっきりしない場合はsay that SVを使います。tellは二重目的語をとる必要がありますからね。

 発話内容が疑問文の場合は、間接疑問を使います。疑問詞疑問文の間接疑問は疑問詞SVですが、yes/no疑問文の間接疑問は、if SVかwhether SVです(orを使った疑問ではwhetherしか使えません。また、話法とは関係ありませんが、whether節は主語になれるが名詞のif節は主語になれないというのも覚えておきましょう)。
 疑問内容を発話するので、動詞はaskです。

 発話内容が命令文の場合は、「〜するよう命ずる」「〜しなさいと言う」のですから、tell A to doなどを用います。上官の命令という場合だとcommand A to do、医者などからの忠告という場合にはadvise A to doを使うなど、場面に応じて動詞を変えられるといいですね。
 pleaseを使った文の場合は、「頼む」というニュアンスが必要なので、ask A to doを使います。
 Let's〜の勧誘文の場合は、「〜しましょうと提案する」わけですから、suggestを使います。提案を表す動詞ですから、that節の中は、shouldを使うか、動詞の原形にしておきます(参照:助動詞 2の「特殊なshould」の項)。

 要するに、発話内容で用いる構文が決まっているわけです。まずここをきっちり暗記しておきます。


 構文が決まったら、次に細かな修正を施していきます。はじめに書いた「代名詞や指示語を、客観的な立場に立った言い方に変える」という修正をおこなうのです。
 具体的には……

1.代名詞を、話者から見た形に変える。
2.副詞・指示語を、話者から見た形に変える。
3.時制を主節の動詞にあわせる。



 「Harris said, " We'll start tomorrow morning."」を例にとって、話法の転換をしてみましょう。
 まず、発話内容が平叙文なので、Harris said that〜という形になります。

 そして「1.代名詞を、話者から見た形に変える」に進みます。直接話法でのweは、ハリスから見た「私たち」ですから、客観的に考えれば「ハリスたち」、つまり「彼ら」となります。theyを使うのですね。
 次に「副詞・指示語を、話者から見た形に変える」。tomorrow morningは客観的に見ると、その話をした次の日の朝です。ということは、the next morningとすればいいですね。
 最後に「3.時制を主節の動詞にあわせる」。ハリスが喋ったのは過去ですから、文の内容も過去時制に合わせます。具体的には、willとなっているところをwouldに直すのです。

 修正を施して完成した文は、このようになります。

 Harris said, " We'll start tomorrow morning." 
→ Harris said that they would start the next morning.


 指示語に関しては、ある程度法則がありますので、その都度頭を使うのが面倒という人は、覚えてしまっても良いでしょう。

話法転換時の指示語の変化(直接話法→間接話法)

this.  → that
here  → there
now  → then
today  → that day
tomorrow  → the next(following) day
yesterday  → the day before / the previous day
〜ago  → 〜before
last〜  → the last〜


 いくつか例を挙げておきましょう。

She said to Bob, "I've never thought of that."
 →She told Bob that she had never thought of that.

He said to me, "I am free now."
 →He told me that he was free then.

Donald said to me, " Do you know who that guy is ?"
 →Donald asked me if I knew who that guy was.

The visitor said, " Is your father at home or at his office ?"
 →The visitor asked me whether my father was at home or at his office.

Larry said to me, " Stay in touch with me."
 →Larry told me to stay in touch with him.

His secretary said to me, " Please call back."
 →His secretary asked me to call back.

He said to us, " Let's have a coffee break."
 →He suggested that we should have a coffee break.


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