関係詞 3                          前のページへ戻る


 この項では、関係詞の非制限用法(継続用法)について見ていきましょう。


1.非制限用法とは

 まず、「関係詞1」「関係詞2」で説明してきた用法は、基本的に制限用法と呼ばれます。

 英文法で、「制限」とか「限定」と言われた場合、日本語で言う「修飾」とほぼ同義です(違いについては後述)。関係詞の役割は、名詞(先行詞)の内容を説明する、というものでしたね。このように名詞を修飾する関係詞節の役割を「制限用法」と呼ぶのです(形容詞が名詞を説明する用法を「限定用法」と言いましたね、「分詞」のところでやりました。それと同じです)。

 では、「非制限用法」とは何か。もちろん「制限用法」ではない、ということですが、具体的にどういう役割を果たすのか。それは、先行詞の内容について補足説明するということです。「補足説明」と言うことは「捕足」、つまり「おまけ」ですから、非制限用法の関係詞節は副詞節ということになります。

 ならば、非制限用法であると、どのようにして見分けるか。それは、先行詞の後ろ、関係詞の前にコンマがあることです。けっこう分かりやすい目印ですね。
 なお、非制限用法で使える関係詞は、who / which / when / whereの4つを押さえておきましょう。whomも非制限用法で使えますが、whomを使うべき場合でも、実際にはwhoが使われることが多いです。whyやhowなどは非制限用法で使えませんが、とりわけ正誤判定などで問われるのは、thatは非制限用法では使えないという事実です。
 
 次に訳しかた。
 補足説明ですので、「それ〜だが」を基本とします。例えばwhoなら「その人は〜だが」、whenなら「その時〜だが」とすればよいのです。

 まとめておきましょう。

関係詞の非制限用法
 , + 関係詞(who / which / when / where / 代名詞 of which/whom)
 「それは(を)/その人は(を)/そのとき/そこで/その[代名詞]は(を) 〜だが」

 いくつか注意点を例文と共に見ておきましょう。

ex.1  I answered the question, which I found quite difficult.
   「私はその質問に答えたが、それはとても難しいと思った」

 whichは合成前はfoundの目的語ですね。find OC「OがCと分かる」、第5文型の用法です。
 関係代名詞目的格は制限用法なら省略可能ですが、非制限用法の場合は省略できません

ex.2 He said he couldn't speak Russian, which was untrue.
   「彼はロシア語が話せないと言ったが、それはウソだった」

 この例文のように非制限用法の関係詞whichは先行詞に文やthat節、形容詞をとることができます

 非制限用法については、ともかく訳せるようになることを目標としましょう。訳さえできれば、後の文法的な性質は、制限用法と同じです(関係代名詞の後ろは不完全、など)。



2.非制限用法と制限用法の違い

 よく質問されますので、例文で理解しておきましょうか。

ex.3 He has a daughter, who is a famous writer.
   「彼には娘が一人いるが、彼女は有名な作家だ」

ex.4 He has a daughter who is a famous writer.
   「彼には有名な作家である娘が一人いる」

 この2つの文の違いが分かりますか?
 
 非制限用法では、コンマの前でいったん区切りが入りますので、ex.3では、「彼には1人娘がいる」でいったん切れます。つまり、彼にいる娘の数は1人です。
 しかし、制限用法ではwho以下は先行詞とくっつきますから、ex.4の場合、「作家である娘」は1人ですが、それ以外に娘がいる可能性が出てきます。

 「コンマの前でいったん切れるぞ」ということを分かっておけば、受験に関しては問題ないでしょうが、きちんと理解しておきたい人のために説明しておきましょう。
 この辺りを理解するには、英語における「制限」「限定」という意味合い、つまり日本語の「修飾」との違いを理解しておく必要があります。
 
 例えば、「彼女は美しい少女だ」と「She is a beautiful girl.」。同じ内容を日本語と英語で表したものですが、「美しい少女」と「beautiful girl」、「美しい」と「beautiful」はそれぞれ「少女」「girl」を修飾しているのですが、役割は微妙に違います。
 日本語の場合、修飾という言葉の通り、意味を付け加える役割を果たしています。つまり、「少女」という概念に、「美しい」という意味合いを付け足しています。まぁこれは当たり前のことでわざわざ説明するまでもないですね。

 では、英語の方はどうなのか。
 英語では、「限定」や「制限」という言葉どおり、「beautiful」は意味を限定しているのですね。つまり、「girl」と言ったときに、いろんな「girl」が想定されるのです。背の高い少女、低い少女、かわいい少女、格好いい少女、頭の良い少女……その中から、「beautiful」という概念に当てはまる少女に範囲を狭めるわけです。いろんな少女の中から、美しい少女に限定するのですね。

 つまり、日本語では形容詞は意味を足し算するのに対し、英語では意味を引き算していくのです。まぁ英語話者がこんなことをイメージして話しているとは限りませんが、語法、文法の点からすればそういう解釈になります。

 ですので、非制限用法の関係詞が使われる場合というのは、「限定する必要がない場合」なんですね。ex.3も、「娘は1人」という時点で、「娘」以上に範囲を狭める、限定する必要はもう無い。だから、それに対し説明するなら、限定用法でなく非制限用法でなければならないのです。別の言い方をすれば、英語では、「〜でないA」が存在する場合でないと、形容詞を付けて「〜なA」とは言えない、ということです。

 固有名詞や人称代名詞にも制限用法は使えないのですが、これも同じ理由からです。固有名詞や人称代名詞は、既に範囲がじゅうぶん限定されている。例えば「資源を輸入に頼っている日本」というように、日本語なら「日本」という語の前に幾らでも説明をつけられますが、英語では「Japan which…」とすることはできません。「Japan」はこの世に1つしかなく、限定する必要性がないからです。「Japan, which…」とせねばならないのです。


 ふだんはそれほど神経質に考える必要はないと思います。下線部訳の場合は、制限用法と非制限用法は訳し分けすべきですが、そうでない場合は、制限用法であっても非制限用法と同じく前から訳し下ろして構いません。非制限用法と制限用法で大きく意味が変わる事例は、実際にはそれほど多くありませんし、英文をある程度のスピードで理解するためには、前から読んでいくという姿勢を身につける必要があるからです。

 まず、1つしか存在しない物・人には制限用法が使えない、というルールをきっちり覚えてください。


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