準動詞 1                          前のページへ戻る

 
 準動詞とは、動詞から生まれたが別の品詞としての役割を果たす物、具体的には不定詞・動名詞・分詞(現在分詞と過去分詞)のことを言います。ちなみに、不定詞は「to+動詞の原形」(※1)、動名詞は動詞にingを付けた形、分詞のうち現在分詞は動名詞と同じく動詞にingが付いたもの、過去分詞の方は動詞にedが付いたもの(不規則動詞の場合は特有の形を持つ)で表現します。

※1 使役動詞や知覚動詞では「原形不定詞」というtoのない動詞の原形を使った形もあるが、
   混乱を避けるためここでは触れない。



 まずは、準動詞それぞれの役割をまとめていきましょう。

 不定詞は、中学でやったと思いますが、「名詞的用法」「形容詞的用法」「副詞的用法」の3種類があります。つまり、名詞・形容詞・副詞として機能するわけです。品詞が一つに定まっていないから「不定」詞なんですね。

 動名詞は、文字通り名詞の役割を果たします。
 ただ、名詞には形容詞的機能もあります。例えば「income tax(所得税)」とか「coffee house(喫茶店)」とか。前側にある単語は名詞なんだけど、後ろの名詞について説明しているため形容詞のような役割を果たしています。で、動名詞も名詞ですから、この役割があります。

 「sleeping baby」は「寝てる赤ちゃん」で、「sleeping」は現在分詞です。あとでやりますが、分詞は形容詞なので、これは何の問題もなし。では、「sleeping bag」は?「寝ているかばん」?おかしいですね。
 「〜ing+名詞」で「〜している…」と訳しておかしい場合、その「〜ing」は現在分詞ではなく、動名詞なんです。この場合、「〜するための…」というのが直訳になります。例の場合、「眠るためのかばん」ってことで、「寝袋」のことになります。


 分詞ですが、先ほど言ったように、基本的に形容詞の役割を果たします。
 ただし、分詞構文の場合のみ、副詞の機能を果たします。分詞構文については、別ページで詳しくやりましょう。

 では、ここまでをまとめておきます。

準動詞
不定詞
 to+do:名詞・形容詞・副詞
動名詞
 doing:名詞(名詞の前に付いた場合形容詞的用法有り)
分詞
 doing/done:形容詞(分詞構文の場合のみ副詞)


1.不定詞の用法

(i) 名詞的用法「〜すること」

 名詞として使われる不定詞は、文の主語や目的語、補語になることができます。ただし、前置詞の目的語にはなれません。

ex.1 To take a picture is fun.
   「写真を撮るのは楽しい」(文の主語)

ex.2 My dream is to be a movie director.
   「私の夢は映画監督になることです」(文の補語)

ex.3 I like to swim in the sea.
   「私は海で泳ぐのが好きだ」(文の目的語)


(ii) 形容詞的用法「〜ような」「〜ための」

 名詞の後ろから、その名詞を修飾する用法です。義務や可能の意味合いがニュアンスに含まれますが、敢えてその意味合いを日本語訳に込める必要はありません。

 訳は難しくないでしょうが、文法問題や英作文に対応するため、次の2つの例文の違いを理解しておく必要があります。

ex.4−1 He has no family to support him.

ex.4−2 He has no family to support.

 見た目の違いは、to supportの後ろに目的語があるかないかだけです。しかし、この小さな違いは、大きな違いなのです。

 形容詞的用法の不定詞部分が完全、つまり目的語まできっちり書いてある場合、修飾されている名詞は不定詞の意味上の主語になります。ex.4−1の文では、「彼を支える」の意味の上での主語は、修飾される語である「家族」なのです。だから日本語に丁寧に訳すと、4−1は「彼には支えてくれる家族がいない」という訳になります。
 一方、不定詞部分が不完全、つまり目的語が欠けている場合、不定詞に修飾される名詞が不定詞の意味上の目的語になります。不定詞が他動詞なのに目的語が書いていない場合、或いは自動詞だけど前置詞が付いている場合は、そのうしろに本来書かれるべき語が、toの前にあるということです。ex.4−2の文では、「家族」は「支える対象」なのです。だから4−2は、「彼には支えるべき家族はいない」という意味になります。

 もう一度まとめます。

不定詞形容詞的用法

名詞+ to 他動詞+目的語/名詞+ to 自動詞(不定詞部分が完全)
   名詞は不定詞の意味上の主語

名詞+ to 他動詞/名詞+ to 自動詞+ 前置詞
(不定詞部分が不完全)
   名詞は不定詞の意味上の目的語

 気を付けるのは、「名詞+to不定詞+前置詞」のパターンです。

 例えば、「書くためのペン」。a pen to writeとしがちですが、これだと「writeの目的語がペン」或いは「writeの主語がペン」ということになり、いずれにしてもおかしなことになってしまいます。ペンは、書くときに使う物。「ペンを使って書く」というのは、「write with a pen」ですよね?
 ですから、「書くためのペン」はa pen to write withとしなければならないのです。この前置詞を置くことができない受験生は結構います。しっかり理解して、差を付けましょう。


 また、形容詞的用法の中には、同格の用法で使われる物もあります。「〜するという…」「〜する…」と訳すものです。これは、修飾される名詞が或る程度決まっていますから、例えばthe chance to do「〜する機会」とかthe ability to do「〜する能力」というようにイディオムとして覚えるのが早いでしょう。


(iii) 副詞的用法

 副詞的用法は数が多いので、整理しながら見ていきましょう。


−目的「〜するために」−

 これは中学で習いましたね。

ex.5 We took a taxi to be in time for the party.
   「私たちはパーティに間に合うためにタクシーに乗った」

−感情の理由「〜して」−

ex.6 I am very happy to see you again.
   「また会えて非常に嬉しいです」

 これは中学の時に説明されていない人もいるかもしれませんが、「Nice to meet you.」もこの用法が使われていますし、「be surprised to do(〜して驚く)」といったイディオムにも使われていますので、分かりやすいと思います。感情を表す形容詞のうしろにto不定詞が来たらこの用法だと思ってください。

−判断の根拠「〜するなんて」−

ex.7 He must be rich to have that expensive car.
   「あんな高価な車を持ってるなんて、彼は金持ちに違いない」

 問題として出てくる頻度は低いので、他の可能性を先に考えて、どの訳も合わないなとなったらこの「判断の根拠」を思い出すようにしましょう。

−結果「〜するまで」「結果的に〜する」−

ex.8 Few people live to be 100 years old.
   「100歳になるまで生きる人は少ししかいない」

 これは慣用表現として使われる物が多いので、幾つか覚えておきましょう。

結果のto不定詞

grow up to be〜 「成長して〜になる」
live to be〜 「〜になるまで生きる」
wake up to find OC 「目覚めたらOがCだった」
…(,)only to do 「…したが結局〜しただけだった」
…(,)never to do 「二度と〜しなかった」


−形容詞限定−

ex.9 This river is dangerous to swim in.
   「この川は泳ぐには危険だ」
 直前の形容詞の内容を説明する用法です。

 こう覚えると分かりやすいでしょう。

 It is 形容詞 to V A.
=A is 形容詞 to V.

 形式主語構文の、不定詞の目的語に当たる部分が、文の主語に飛び出したわけです。
 ex.9は、It is dangerous to swim in this river.と書き換えることができます。
 訳はそれほど難しくないでしょうから、不定詞の目的語が文の主語になっている、つまり不定詞が不完全な形になっているということをしっかり頭に入れましょう。不完全な形の不定詞は、この「形容詞限定」と「形容詞的用法で、修飾される名詞が不定詞の意味上の目的語」の場合のみです。

 なお、この形容詞限定はどんな場合でも使えるわけではありません。例えば「It is nice to see you again.」を「You are nice to see again.」と書き換えたら意味不明な文になってしまいます。
 具体的には、easy / difficult / hard / tough / dangerous / goodといった主に難易を表す形容詞を使った場合でないと、形容詞限定の不定詞は用いることができないのです。


 他にも「条件」や「程度」の用法がありますが、「条件」は仮定法と併せて使われることが多く、「程度」はenough to doやtoo〜to doなどの慣用表現で使われるため、特にここで覚える必要はないです。


2.不定詞の意味上の主語

ex.10−1 It is natural to say so.
    「そう言うのは当然だ」

 この文はちょっと不自然ですね。「誰が」の部分が抜けているからです。「そう言う」のは、「誰」が「言う」のかを明らかにしないと、おかしな文のままです。
 このように、不定詞の動作が誰の動作かを明らかにしたい場合、不定詞の直前にfor Aを書く用法があります。

ex.10−2 It is natural for your parents to say so.
    「君の親がそう言うのは当然だ」

 to不定詞の直前に「for A」があったら、意味上の主語だと脊髄反射できるようにしておきましょう。
 形容詞によっては「〜にとって」と訳した方がきれいな場合もありますが、意味上の主語というのを意識するため、はじめは「〜が」と訳す癖を付けましょう。

 さて、意味上の主語を表す方法は、forのみではありません。

ex.11 It is very kind of you to carry my baggage.
    「荷物を運んでくれるなんて君は親切だね」

 直前が人の性質や性格を表す形容詞の場合、forではなくofを使います。これも問題に出されますので、きっちり覚えておいてください。
 ofを使うべき場合、「It is 形容詞 of A」を「A is 形容詞」に書き換えることができます。forの場合には不可能ですので、見抜く手段の一つとして利用しましょう。


3.時間差を表す不定詞

ex.12−1 It seems that he is an actor. → He seems to be an actor.
       「彼は俳優であるように思われる」

 It seems that SV = S seems to do「SはVするように思われる」という構文を利用した書き換えです。
 これは問題ないですね。

ex.12−2 It seemed that he was an actor. → He seemed to be an actor.
       「彼は俳優であるように思われた」

 これも大丈夫でしょうか。
 理解して欲しいのは、不定詞は、述語動詞と同じ時制を表すのが基本だ、ということです。

 では、これは書き換えられますか?

ex.12−3 It seems that he was an actor.
       「彼は俳優だったように思われる」

 俳優だったときと、思われるときが、ズレている場合です。seem to beとやってしまうと、ex.12−1と同じ形になってしまいます。意味内容が違うのだから、同じ形ではマズいですよね?

 このような時間のズレをどのように表現するか。
 to不定詞に過去形があれば分かりやすいでしょうが、to wasとやるのはルール違反です。

 過去形を使いたいけど原形しか使えない…そういうときに使われるのが、have doneでしたね(助動詞have doneの項を参照)。つまり、to have doneという完了不定詞を使ってやれば、述語動詞より前のことを表現していると見なされるのです。

ex.12−3 It seems that he was an actor. → He seems to have been an actor.

 もう一つ、ついでに示しておきましょう。

ex.12−4 It seemed that he had been an actor. → He seemed to have been an actor.
       「彼は俳優だったように思われた」

 左側のhad beenは大過去です。


 さて、準動詞2では、動名詞の話をしていきましょう。


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