英語の勉強法                          前のページへ戻る

 
 英語ができないで大学受験に挑むのは、無謀と言って良いでしょう。
 私立理系だと数学と理科のみというところもありますが、英語の勉強を放棄すると選択の幅がかなり狭まりますし、何より、理系の人間は卒業研究の際に、英語で書かれた過去の論文を読む必要があります。もしかしたら、大学に入ってからは、文系よりも理系の方が英語に触れる機会が多いかもしれません。

 というわけで、英語を避けるのは高校生としては愚策です。むしろ、成績が上がってくるまでの時間には個人差があるとはいえ間違いなく「努力がそのまま点数に出る」教科ですから、目を背けずに真正面から取り組むのが吉です。

 とはいえ、努力の方法を間違えると、マイナスにはならずとも、微々たる効果しか得られなかったり。きちんとした戦略を練って、受験に向かいましょう。


 社会人の方は……
 文法は基礎をしっかり、受験に出てきそうな暗記表現は軽めに。
 単語や語法については、単語集などはチェックに利用することとし、基本的には、問題集を解いたときや、英文を読んだときに「覚えておこう」と感じた単語・熟語や語法を、メモ帳などにまとめていくのが良いと思います。走り書きで構いません。知識はメモ帳ではなく、頭の中に入れるのですから、最終的に「暗記する」ことができれば問題ないのですから。


1.基本方針

 大学受験の英語で点数を採るには、(リスニングは形式が全く異なるのでここではひとまず措くとして)「単語力(熟語も含む)」「文法力」「読解力」が土台になります。文法問題は主に文法力、長文読解問題は3つすべて、英作文は単語力と文法力が基盤になります。

 ただし、3つの力を、バラバラに鍛錬するのは非効率です。

 けっこう多いと思います、「単語をマスターしてから文法へ、文法を理解してから読解力を鍛えよう」と考え、実践している人。
 これは、たしかに効率の良い方法に思えます。単語が分からなければ文法問題の意図は読み取れないし、単語や文法が分からなければ長文は読めない。

 もちろん、そういった側面は確かに存在します。単語が全く分からないのに、文章が読めるはずありません。
 しかし、考えてみて下さい、単語集だけをひたすら読んで、それらの単語を覚えることができるでしょうか?やる気が続くでしょうか?凄まじい気合いの持ち主なら可能ですが、普通なら3日で飽きます。で、しばらく経ってから「やっぱちゃんとやろう」と思い立って、でもまた数日で放り出す。経験ありますよね、単語帳のはじめの10ページは順番まで覚えている、という。

 3つを独立して勉強するのではなく、並行して学習する必要があるのだということを頭に入れて下さい。最低限の単語はあらかじめ身に付けておく必要がありますが、ある程度単語を習得したら、「単語帳で単語習得」と「文章問題で単語を覚えていく」というのを同時進行させていくべきなのです。単語は文章という文脈の中で覚えるのが効率的であるがゆえに、長文読解問題を解きながら単語を覚えるのがよい、しかし一方で、文章問題だけでは必要な単語全てを網羅できるとは限らないという問題点もあり、それは単語帳でカヴァーする必要があるからです。「単語集で見た単語が長文に出た」あるいは逆に「長文で見かけた単語が単語集に詳しく説明されていた」というようなことがあれば、記憶も有機的に繋がってきます。

 そして何より、受験生には時間がありません。単語をマスターしてから文法をやろう、などと悠長なことを言っている余裕はありません。同時進行で、それぞれのフィードバックを得ながら、可能な限り最短距離を走る必要があります。


 来年春に受験…という人の場合。

 夏休み前:文法の問題集、単語集を毎日
        長文読解を週2回くらいのペースで
 夏休み:文法の問題集、単語集を引き続き。完璧であれば上のレベルへ
      長文読解を毎日、英作文の勉強を開始
 秋:文法の問題集は復習メイン、単語集は軽めにしつつ引き続き。
   長文読解、英作文の勉強を継続。
   センター試験過去問などでセンター対策
   国立受験者は、記述・論述の問題集をやる時間を増やす 
 二次直前:志望大の傾向に併せて

 中学レベルの単語もおぼつかないという人は、できるだけ早い段階で完成させておきましょう。これは、例外的に、他の勉強をさしおいて短期集中で仕上げましょう。


 最後に、最も大切なことを。
 英語に関しては毎日学習を継続すること。週に一回まとまった時間で…という勉強では、成績が上がってくるまでに無駄な時間がかかります。週に一回5時間勉強するくらいなら、毎日30分の方がよっぽど効果があります。


2.単語

 まず、単語集を使った勉強。

 これは、熟読と言うよりはスピード重視、回数重視でいきましょう。
 1回読んだだけで覚えられるという人は、それはあなたの類い希なる才能ですので有効に利用しましょう。ふつうは、1回読んだだけでは覚えられません。それはいくら集中して熟読しても同じで、たしかに熟読すれば、読んだところを数日間は覚えていられるでしょう。しかし、熟読は時間がかかります。単語集を一回りした時点では、おそらく初めの方の単語の幾つかは忘れているでしょう。

 暗記で大切なのは、忘れるか忘れないかのうちにもう1回復習することです。一回りのペースを上げ、漆を何度も塗り重ねるように、うろ覚えを何度も何度も繰り返し、頭に定着させていくのです。毎日20〜30分くらい、一ヶ月で1冊終えるくらいのペースでいきましょう。

 なお、単語集は読むだけで構いません。英作文の勉強などを通して、必要な単語は書けるようになりますし、何より、単語を頭に入れていけば、綴りの法則が何となく見えてくるものです。


 どの単語集を使うかは、実際に本屋で立ち読みして、自分に合う物を選びましょう。
 最良は私が塾で配布している単語プリントと自負してますが……
 「Duo」「システム英単語」、理屈型の人には「ドラゴン・イングリッシュ 必修英単語1000」などもお勧めできます。



 長文読解問題を利用した単語の覚え方は、「4.長文読解」の項で説明します。



3.文法

 文法軽視の風潮がはびこった時期もありましたが、「問題に出るから」という理由以上に、文構造の把握や英作文において、英文法の知識は必要不可欠です。英文法がきちんと理解できていれば、イディオム表現や暗記構文の何割かも、暗記ではなく理屈で頭に入れることができます。

 1年後の受験を目指すというのであれば、問題集を通して理解していくのがよいでしょう(数年後の受験、或いはTOEICでの高得点を目指す…というのであれば、基本の考え方を理解するのにうちのサイトも利用してみて下さい)。「ロイヤル英文法」のような参考書は、「英文法の辞典」として使う分には問題ないですが、学習の中心とするには細かすぎます。
 「頻出英文法・語法問題1000」「英文法語法良問500」か、偏差値50行ってない人は「英文法基礎10題ドリル」が良いでしょう。

 これいがいにも「Next Stage」など有名な物がありますが、これらは(先ほど紹介した3つのうち初め2つも)受験用の文法問題集に出ている問題は、難関私大向けレベルの物が非常にたくさん入っているという認識は持っておいてください。センター試験では、基本的かつ必要不可欠な物しか問うてきません。また、社会人が勉強するには、これらの問題集は細かすぎるかも知れません。受験英語の世界では、文法に関する限り、特に私大において重箱の隅をつつく問題がいまだに扱われているのが悲しい現実です。



 問題は、ノートに解いてもいいですが、メモ帳に書いていってもいいです。問題が解けたかどうかよりも、問題の解法があっていたか、必要な文法事項を理解していたかの方が、はるかに重要です。
 専用のノートを作るのなら、覚えておきたい事項、文法項目をきれいにまとめていくのも良いでしょう。一定期間が経ったら、あるいは電車の中などで、そのノートを見直し記憶を定着させるのです。間違えた問題だけをピックアップしてノートしていくのも、いいかもしれません。
 暗記事項(慣用的な独立分詞構文とか)は、要らない紙に何度も書いて頭に詰め込んでいきます。

 1年間で3回は繰り返しましょう。「だいたい覚えた」ではダメです。問題を解く際に解説まで含めて頭に浮かんでくるくらいにしておきましょう。



4.読解力

 入試英語では、長文総合問題に配点の半分以上が割かれます。長文の読解は入試英語の生命線です。

 単語と文法が分かっていればどんな文でも読める、というものではありません。とくに二次試験の場合、日本語であっても理解が大変な、硬質の文章が題材となる場合が多いです。文章構造を把握する方法や、答案の作り方(日本語での表現のしかた)などを、理解しておく必要があります。
 解説が豊富で、自習に資する問題集には、以下のような物があります。もちろん、非常に多くの問題集が出ていますから、これら以外にもあなたに適する良書があるかもしれません。必ず自分の目で確認しましょう。



 こちらは、文法問題とは違って、自分の解答は問題集やノートにきちんと残していった方がいいでしょう。単語や文法など「英語に関する事項」だけでなく、「論述問題の答え方」「日本語の表現方法」も問題になってきますから、それらは解答を書いたノートに必要なポイントをメモしていくべきでしょう。
 文法問題のように、重要事項をまとめたノートを作ってもいいですが、余白があれば、問題集にいろいろ書き込んでいくのも一つの方法です。長文総合問題については、何度も解くということのメリットはあまり無いですから(二度目だと内容把握問題が容易に解けます)、「次に解くときのために書き込みはしない」という配慮は不要です。
 復習は、それらの書き込みを、必要に応じて、読んだり読まなかったりして進めましょう。1度解いて、解説を理解しノートを作った後にやっていくべき復習は…
 1.ノートの見直し
 2.文章に関連した文法や単語・イディオムの見直し(書き込みの復習)
 3.文章の音読(頭の中で意味を把握しながら)

 とくに、文章の音読はきちんとやっておきましょう。英語の言い回しに感覚的に慣れていきますし、文章を読むスピードも上がっていきます。発音を確認しながら音読することで、リスニング対策にもなります。「読んだことのある文章の音読」は、毎日10分程度で構わないので、試験までずっと継続しましょう。

 
 構文理解も、段落構成の把握も、論述の答案の作り方も問題ない…という段階に達したら、後は多くの問題に触れて、単語力を増強していってください。志望大の過去問を解いてみて、どれくらいのレベルの単語まで分かっていればよいのかも、確認しておきましょう。
 海外の文書をガンガン読めるようになりたいという場合は、単語の勉強は際限なく続きますが、受験ならば、志望大のレベルで打ち止めにし、あとは、たまに問題を解いて感覚を失わないように気を付けながら復習にいそしみましょう。他教科の勉強に、多くの時間をかけ総合的な力を養ってください。



5.英作文・リスニング

 英作文は、とにかく書いて練習することです。
 参考書は、立ち読みして自分にあった物を選びましょう。解説が豊富で、用例が多く載っている物、できれば添削形式の物が分かりやすいでしょう。添削してもらえる先生がいるなら、どんどん添削してもらいましょう。




 リスニングは、「知らない単語は聞いても分からない」という当たり前の事実を認識することから始まります。
 そして、文章を聴いて理解するということは、文章を、ある程度のスピードで読んで、そのスピードで同時に理解もするということと同じです。読んで理解できなければ、耳で聞いて理解などできません。

 つまり、リスニングを鍛えるには、単語力と文章読解力が必要なんですね。つまり、リスニングの勉強と文章読解の勉強は、かなり重なっているということです。それらを疎かにしていくら英語のリスニング用CDを聴いても、効果はわずかです。

 長文読解の勉強と並行して、CD付きの問題集で耳を鍛えましょう。よく聞こえなかった部分は必ずスクリプトで確認し、自分の耳の弱点を把握して改善するように努めましょう。また、聴くだけでなく、必ずスクリプトを音読すること。「聴く」と「話す」は連動しています。ふだんから長文の音読をしておくのも、効果的です。また、VOAのニュースはスクリプトも付いているしゆっくり喋ってくれるので、初学者にはうってつけの教材です。慣れてきたらCNNなどで鍛えるのも良いでしょう。

 ちょいと練習しただけではリスニング能力はアップしませんから、ふだんから「聞く」「音読する」ことを欠かさないようにしましょう。
 


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